前人未到温泉

秘湯どころじゃない、人類未発見の温泉(源泉)を探して”史上一番風呂”に入ります。

【伊豆半島】源泉と海水が混ざる浜辺野湯&鉱山跡から流れ出る硫黄泉

片瀬白田 温泉 野湯 源泉 伊豆 こぼれ湯 硫黄鉱山

野湯は無限かもしれない

野湯を始めたころ、野湯というのは有限だと思っていた。

狭い日本で湧いている温泉なんてほとんどが利用されているはず。これから未到温泉を探しながら既に発見されている野湯も周っていくつもりだが、「野湯」なんて検索する限りせいぜい3〜40個くらいか?野湯が切れたら温泉探しだけじゃネタが持たないな。

そう思っていた。

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野湯にも入らないと温泉が見つからなかった空振りの報告しか書けない

しかしそれは杞憂だった。活動を始めてからしばらくして分かったのだが、さては野湯は無限にある。

いや無限というのは言い過ぎたが、未だに国内にいくつあるのか把握できていないくらい各所にある。活動当初は【野湯+(県名)】で検索してふむふむ、と思っていた。その後はさらにエリアを絞って【野湯+(詳しい地名)】で検索したり、野湯好きな先輩方のSNSを見たりしてさらにいろんな野湯を知った。しかしそれが全てではなかった。最近やっているのは【野湯+(川の名前)】での検索だ。これが恐ろしい。

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野湯検索、これまでの経緯

GoogleMapには名前が載っていないような山奥の川(沢)も国土地理院地形図には名前が載っていることもある。いつものようにサーモ画像で目星をつけて、そのエリアにある川の名前で検索すると今まで全く知らなかった野湯が見つかるのだ。

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湯沢とか硫黄沢という名前の沢は言うまでもなく怪しい

この作業をやり始めると沼である。もちろん、ほとんどの川で野湯情報はヒットしないのだが、まれに情報が見つかることがある。しかも2・3個の個人ブログにしか情報のない源泉や沢屋さん(※沢登り好きな人のこと)のブログにしか情報のない知名度皆無な源泉の情報が見つかることがあるのだ。ものすごく手間がかかるが、そういう野湯を入れるともう無限。そんな野湯情報を見つけた時には興奮もするが、未到温泉を探している自分としては「ここへ探しに行こうと思ってたのに、もう見つけられちゃってるのかよ」と落胆もある。

今回はそうやって川の名前を元に知った伊豆のマイナー野湯へ向かった。

 青白いせせらぎを辿って白田硫黄鉱山跡へ

 2021シーズンが開幕した。最初の活動で向かったのは静岡県・伊豆半島。温かくなってきた3月下旬だったが、山はまだ寒い時期。なるべく温かいエリアを選んだ。思えば昨シーズン一発目も伊豆諸島・式根島の野湯だった。

【昨シーズン1回目の伊豆諸島・式根島探索】

tori-kara.hatenablog.com

 電車で降り立ったのは伊豆半島の東部にある片瀬白田駅。東京駅から新幹線で熱海まで45分、そこから伊豆急で1時間ちょっととアクセスもなかなか。

片瀬白田駅

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まず目指す野湯はこの片瀬白田を通り海に流れ出る「白田川」という川の上流域にある。海際の駅から山に向かって山頂近くまで10km以上登っていくことになるのだが、この山というのが有名な天城山だ。天城山を越えていく「天城越え」とはならないが海抜0mからの天城登山をまずは楽しもう。

白田川

白田川下流域。向かって右岸の地名が白田、左岸が片瀬なので駅名が片瀬白田

そしてこの白田川だが、一見して分かるように川の水が青白い。これは怪しい。数日前、人工衛星のサーモ画像を基にこの東伊豆〜南伊豆エリアの川をしらみ潰しに探していたところ、白田川の色が特徴的だという情報があり調べてみると最上流部にある硫黄鉱山跡から硫黄成分たっぷりの温泉が流れ出ているという情報を目にしたのだ。

白田川上流部を目指します

みかん畑と桜 伊豆半島

桜と柑橘類の畑。伊豆らしい春の景色

事前に白田川の色のことを詳しく調べていると下田高校の科学部学生による研究が公開されていた。

izugeopark.org

この研究では上流部の硫黄採掘所跡から高濃度の硫黄検出されたことや、硫黄コロイドが含まれた水が実際に青白く見えることから白田川の色もやはり硫黄による影響だろうと推論されている。採掘場跡の泥からは質量比3割という高濃度で硫黄が含まれていたというし、下流域でこれだけ水の色に影響があるというのなら相当濃厚な硫黄泉が期待できる。

水深があるとよりいっそう青みが深く見える

登山とはいっても道はだいたい舗装されている

(※注 この時も野湯までの道の一部に崩落箇所があり工事中でした。看板や立ち入り制限など現場の状況に準じて行動してください)

この日は温かく山歩きには快適だ。快調に歩いていると隣の山筋に大きな風車が見えた。

三筋山 風車 風力発電所

風力発電用の風車が並んでいる

見えているのは三筋山の風力発電用の風車だ。「ゆるキャン」でも野クル一行が訪れていた。ちょうど数日前にアニメ・ゆるキャンの伊豆キャン回を見ていたので本当は劇中に登場するスポットも寄りたかったのだが、今回は時間がないのでそういうルート取りは諦めていたのだ。思いがけず遠くから眺めることが出来てラッキーである。今回、駅から登りの途中まではタクシーを利用したので運転手さんに道中で話を聞いたが、やはりコロナで伊豆の観光客は例年からさらに大きく減ったそうだ。「ゆるキャン」効果で伊豆を訪れる人が増えるだろうか。

わさび畑

上流部には沢水を利用して伊豆らしいわさび畑が

上から見下ろすと目の覚めるような鮮やかな緑色

白田川は遡ると支流に別れ堰口川(せんぐちがわ)に名前を変える。そしてその堰口川の川幅もかなり狭くなってきた頃、硫黄橋という名の橋に差し掛かった。ここに硫黄鉱山跡があるのだ。

硫黄橋 白田川 堰口川

その名もズバリ硫黄橋。

硫黄鉱山跡 片瀬白田

硫黄橋の奥にある洞窟が硫黄鉱山跡

道路上からは見えないがあの穴から硫黄分を多く含んだ温泉水が脇を流れる堰口川に流れ込んでいるはずだ。さらに周囲を見渡すと硫黄橋の向こうに何かが見えた。

白田硫黄鉱山跡 伊豆

誰も来ないような場所だが鉱山跡を示す案内版が

観光利用されているような雰囲気はない山奥深い場所だが意外にも「硫黄坑2号坑」の案内版があった。朽ち果ててはいるが。また「八丁池歩道」の表示版も。八丁池は紅葉や冬場の全面凍結、モリアオガエルで有名な天城山にあるジオスポットだ。(ナレーション等の説明はなかったが「ゆるキャン」でも一瞬映っていた。)天城峠から八丁池を通りここに降りてくるルートも検討していたのだが、そのルートこそがこの八丁池歩道なのだろう。

硫黄鉱山跡と八丁池は直線距離にして1kmちょっと

八丁池歩道と書かれた表示板の脇にはうっすらと石段が見え、先につながっている。少し歩いてみるとすぐ先に横穴が見えた。最初に見つけた坑道跡とは違う穴でこれが「2号坑」ということだろう。

白田硫黄鉱山跡 伊豆 2号坑

舗装された道路から見えない位置に2号坑と思われる坑道と説明板が

表の「2号坑」案内板も倒れていたがこちらの説明板も屋根部分が折れて垂れ下がり荒れ果てている。屋根で隠れた部分を下から覗き込むように読んでみると、

「古文書によると江戸時代(1701年)からこの場所で硫黄が掘られていた。ただ硫黄鉱石の精錬工程で出てくる硫黄残量物によって白田川で鉱毒公害が発生。採掘の差し止めを求めて江戸時代から行われた公害訴訟は180年続き明治になって採掘は終了した。専門家によると日本最初の公害訴訟ではないかと言われている。」

とのこと。

白田硫黄鉱山跡 伊豆 2号坑

下から何とか見えるボロボロ具合だが重要なことが書いてある

教科書上での日本初の公害事件「足尾銅山鉱毒事件」が明治時代初期(19世紀後半)に端を発したものなので、それを大きく更新する話である。足尾銅山の方が採掘開始は早いのでその裏で実は公害被害も早くから起こっていた、と考えると歴史的にも規模的にも足尾銅山の方が重要だろうがこの白田硫黄鉱山跡も「日本初の公害訴訟」の当該地としては十分に価値のある遺構に思える。

白田硫黄鉱山跡 伊豆 2号坑

坑道は四つん這いになってようやく入れる程度。

こちらの坑道からは温泉水は出ていないようなので、最初に見つけたあの川の脇の坑道に戻ろう。

白田硫黄鉱山跡 伊豆

最初に見つけた坑道からはを。硫黄分たっぷりそうな水が流れ出してきている

白田硫黄鉱山跡 野湯
量は少ないが確かに白い水が坑道から染み出してきている。そして何より、坑道に近づくと非常に強い硫黄臭が鼻を抜けた。間違いなく硫黄温泉である。本来ならテンションが上がる瞬間だが今回は若干気が重い。なぜなら、この硫黄温泉水が冷たいことを知ってしまっているからだ。いつもは面白みが下がるので、あまり行く野湯のことを調べないようにしているが今回は情報が少ないだけに湯温まで知ってしまった。

白田硫黄鉱山跡 伊豆 水温 野湯

銭湯の水風呂でもなかなかない水温

真夏ならまだしも3月にこれは厳しいが、事前に知っていただけに覚悟は決まっている。とりあえず湯船を整えよう。

白田硫黄鉱山跡 伊豆 野湯

水量が少ないのでスコップで湯船を掘っていく

坑道の入り口近くで湯船を整えているとこれまで以上に強い硫黄の香りが。泥の成分から、もしくは坑道の奥から流れてきているのだろうか。念の為、硫化水素検知器で測定してみるとごく僅かな反応が。匂いがすごいと思っても低かったり、そんなに臭わない場所で喉に違和感が出るくらい高い濃度だったりと硫化水素濃度というものは体感では分からないものだ。

白田硫黄鉱山跡 伊豆 野湯 硫化水素濃度

硫化水素濃度は問題ないレベル

白田硫黄鉱山跡 野湯

掘ってはみたが泥のすぐ下には岩盤が。浅い。

スコップで堆積した泥を避けてみたのだが、スコップの頭の部分が浸かるくらいの深さにしかならなかった。推定水深15cm。しかも冷たい。なかなか気は進まないが見た目はライトグレーで立派な泥湯といった雰囲気。名前を付けるならば「白田硫黄鉱山の湯」。さあ入浴しよう!

白田硫黄鉱山跡 野湯

腰をつけるのに覚悟のいる冷たさ

白田硫黄鉱山跡 野湯

ああー!

裸になるには肌寒い気温の中でキンキンに冷えた水風呂に浸かる。これは温泉なのだろうか。日本では25℃以上の湯温か一定以上の成分が含まれていれば温泉なので間違いなく後者は満たしているのだろうが。。意を決して腰を据えてみた。

白田硫黄鉱山跡 野湯

水深が浅いことが功を奏した

冷たい…が湯船が浅いのでまあ何とかなっている。深くなくてよかった。そしてここに腰を据えてみると分かるのがその冷たさを超える温泉感。冷たくて気持ちよくはないのだが鼻に抜ける硫黄臭のおかげで温泉に入っている臨場感がすごい。硫黄泉の温泉に入っている時と全く同じ匂いの強さなのだ。その臨場感は目を閉じてみると余計にリアルに感じられる。

白田硫黄鉱山跡 野湯

後ろを見ると洞窟

白田硫黄鉱山跡 野湯

前方にはすぐ先に道路がある特殊なロケーション

洞窟から出てくる温泉というシチュエーションは素晴らしいのだが、いかんせん前方の景色はガードレールと道路なので野趣はあまり味わうことは出来ない。もう少し道路から離れていればいいのだが。

白田硫黄鉱山跡 野湯

横になれば何とか全身で浸かることができる。

野湯の世界にやってくる人は大きく2通りあるように思える。温泉好きが高じてレアな温泉を求めて野湯にたどり着く人、また登山や沢登りなど野外アクティビティが好きでその一環として野湯に入る人。前者の方であればこの湯も難なく楽しめてしまうのかもしれないが、僕の野湯への入り方が後者なのもあってこの湯を心から楽しむにはまだ至れていない。修行不足である。

これ湯じゃなくて水だし。

白田硫黄鉱山跡 野湯

うーん…

思いっきり体が冷えてしまったが今回の目的地はもう1つある。片瀬白田駅近くの海辺に入浴できそうな場所があるという。今度は一気に山を降りていく。

入浴後のケツ

「◯◯屋」という肩書きがかっこいい

早歩きでも山を下り海に出るまで2時間以上はかかる。特に登山道でもないのでちょっと暇だ。その道中、降りながらぼんやりと考えていた。冒頭でも話したが最近、沢屋の人のブログを見ることがある。繰り返すが「沢屋」とは沢登り・シャワークライミングが好きな人の呼称である。同様のパターンで山登りが好きな人のことを「山屋」と呼ぶ。「山ヤ」「沢ヤ」という表記の場合も多い。この呼称がすごくかっこいい。

山屋 沢屋 岩屋 呼び名 登山 沢登り 山登り

山系アクティビティ愛好家の呼称。

「岩屋」は他2つに比べると使われる機会は少ないか

「八百屋」「魚屋」の「屋」である。それらと違って「山屋」「沢屋」は生計を立てているプロというわけではないが、山や沢に関して『生活の一部』『熟練者』という意味では同じ。その練度に対する「屋」だろう。沢登りに関してはほぼ経験がないので「沢屋」と同じかは分からないが、個人的なイメージとしては「山屋」はただ山登りが好きなだけでは名乗ることが出来ない。夏山でも雪山でも四季を通じて、テント泊・山屋泊で日常的にガシガシ山に通うレベルが山屋である。山屋は「山に登る」とは言わない、「山をやる」と言う。呑兵衛が「酒をやる」と言うのと似ている。山登りの世界の段階としては登山家・アルピニスト>山屋>ハイカーでテント泊も冬山もやらない登山者である僕はハイカーだろう。

本沢温泉

何座登っても山小屋泊だけでは「山屋」は名乗れない…気がする。

日常的に山に行けるわけではないので山屋にはなれそうにはないが、「◯◯屋」という手練れ感ある呼び名に漠然とした憧れはある。もしかして野湯に関してなら「屋」をもう名乗れるのではないだろうか。野湯歴はまだ長くないが野湯は愛好家の絶対数が少ないので何とかなるだろう。ハードルが低くていいというか。では野湯好きは何屋なのだろうか。「野湯屋」では捻りがないし、「湯屋」はゴロが悪い。そうなると「風呂屋」はどうだろうか。サウナ好きの呼称として「サウナー」があるが温泉好きや銭湯好きのことのことを「風呂屋」とは呼ばない(そもそも愛好家の呼び名がない?)。風呂屋と呼ばれるのは銭湯など入浴施設そのもので人を指すことはない。そういうことならば野湯界隈で「風呂屋」をもらってもいいだろうか。何時間も山を歩いて全く整備されていない野湯に入りにいく風呂への情熱。「屋」を名乗ってもいいのではないか。そういうことなら僕は風呂屋だ。ついに「屋」を手に入れた。もし『野湯みたいにマイナーな趣味に「風呂屋」はやれん』という温泉・銭湯クラスタの方がいらっしゃいましたらご連絡ください。すぐに取り下げます。

源泉と海水の出会う場所「片瀬こぼれ湯」

白田川 河口

ということを10km歩いてるうちに考えた。海に到着です

 白田川を河口まで辿って降りてきた。片瀬白田の駅もほど近い市街地だが、この町を歩くとすぐに目がつくことがある。温泉やぐらが街の至る所に立っているのだ。

片瀬白田 温泉やぐら 湯気 温泉 源泉

片瀬白田エリアのあちこちに温泉やぐらや湯気がある

伊豆の源泉には不思議な特徴があることを思い出した。伊豆の源泉はどれも比較的高温なのだが、その中でも海抜が低く海辺に近いほど源泉温度が高い傾向がある。隣の熱川温泉も海辺の温泉だがあちこちで湯気が立ち上っている光景が名物だし、この町でも海に近いエリアでは湯気がモクモクだ。冷えた体を温めて帰ろう。

片瀬温泉 源泉

片瀬温泉の源泉の1つ。この日は温かったがこの立ち上り方。相当な高温だ

 入ろうと思っている野湯は白田川の左岸、片瀬温泉エリアの海沿いにあるらしい。野湯と言っても海際の源泉のうち温泉宿で使われなかった部分が海にそのまま流れている「こぼれ湯」なので個人的には野湯と呼ぶかどうかは微妙な気がするが、そうもいっていられない。海辺を歩いて探そう。

片瀬白田 温泉 野湯

この周辺を人工衛星サーモ画像で見ると海沿いの熱反応がすごい

片瀬温泉 海岸線 伊豆大島

海の向こうに霞んで見えるのは

伊豆大島 利島 片瀬温泉

伊豆諸島の伊豆大島と利島だ

海岸線を歩いたがこのエリアで源泉が海に流れ出している場所は2ヶ所あるようだった。どちらの場所も残念ながら砂浜ではなく岩場なのでうまく湯船は作れそうにない。2ヶ所とも入りやすさに大差はなさそうだったが、岩場の傾斜が緩い方に入浴を試みることにした。

片瀬温泉 こぼれ湯 野湯 源泉

選ばなかった方のこぼれ湯は歩道からでも湯気が見える

片瀬 こぼれ湯 野湯

こちらのこぼれ湯に入ることにしました

どう考えても入りやすそうなビジュアルではないが、こんなところに温泉が流れ出していたらここで生まれ育った子どもはきっと無理やり入浴して遊んでいるはずである。もし家に源泉が引かれているとしてもきっとここに友達と入っている。子どもとはそういうものである。

片瀬 野湯 こぼれ湯 温泉

こういう感じですぐ近くの源泉から流れてきて

片瀬 野湯 こぼれ湯 温泉

海に注いでいる

これが片瀬こぼれ湯。そしてここで問題となるのが源泉温度である。街中から湯気が立ち上るくらいなのでこの源泉は非常に熱い。

片瀬 野湯 こぼれ湯 温泉 源泉

この源泉の流れに直接入ることは出来ない

そこまでは事前情報として分かっていた。なのでこの時間に来たのだ。式根島の野湯もそうだったが、海辺の野湯は潮の満ち引きが重要になる。満潮の際に入りやすくなる野湯も稀にあるが、たいていの海辺野湯は干潮時の入浴が適している。今日は潮が大きく引く大潮の近く、そして干潮時間の14時にここを訪れるようにルートを組んだ。源泉が熱いなら海までのストロークが長いほど湯が冷めて快適に入れる可能性が高まると踏んだのだ。

片瀬 野湯 こぼれ湯 温泉 源泉

とりあえず服を脱いだ

ただこの源泉の流れを海まで辿ってみて分かったのだが、どの位置でも熱すぎて入れるレベルにない。どうやらこの流れが海に注いで混ざる波打ち際でないと入浴は出来ないようだ。そういうことなら上記でドヤ顔で解説した干潮満潮の話は正直関係なかった。

片瀬 野湯 こぼれ湯 温泉 源泉

このあたりの波打ち際で

片瀬 野湯 こぼれ湯 温泉 源泉

ちょうどいい湯温の場所を探ろう

源泉掛け流しとはいかなかったが、波打ち際で適温を探す野湯も式根島で経験している。これはこれで楽しい。ただ夏で海に入るにも気持ちいいシーズンならそれほど難しくないのだが、今はまだ3月。海は冷たい。源泉はすごく熱いのでなかなか加減は難しいが入れそうな場所をようやく見つけた。待望の温かい温泉だ。ありがたく頂こう。

片瀬 野湯 こぼれ湯 温泉 源泉

このあたりで腰を降ろしてみますか!

片瀬 野湯 こぼれ湯 温泉 源泉

うん。これ入れてるか…?

ぬくい!ただ、お尻と脚の背面側だけぬくい。ようやくの温かい温泉だが下が岩場なだけになかなか体を浸けることが難しい。これはちょっと湯船を整える必要がありそうだ。

片瀬 野湯 こぼれ湯 温泉 源泉

岩を持ち上げて

片瀬 野湯 こぼれ湯 温泉 源泉

体が浸かれそうな空間を作ります

散々歩いた挙句、ここにきての重労働。快適な野湯に入るのは一筋縄ではいかない。これも野湯の面白さの一つと言えるだろう。体全体をしっかり浸せるレベルのものは無理だが、岩を3個ほど取り除いたところで半身をねじ込めそうな隙間ができた。再度入浴にチャレンジしよう。

片瀬 野湯 こぼれ湯 温泉 源泉

これは…すごく、いい!

海水と源泉が混ざり合いちょうど40℃くらいのいい湯加減。周囲には湯気が立ち込めている。「太平洋を臨む露天風呂」どころではない、太平洋自体に入浴するこのシチュエーション。最高だ。自然の中に飛び込む野湯の醍醐味に溢れている。

片瀬 野湯 こぼれ湯 温泉 源泉

目の前は波が打ち寄せるこの景色

片瀬 野湯 こぼれ湯 温泉 源泉

ワイルド!

ただ湯加減は本当に難しい。この日は海も穏やかだったがそれでも波の高低にムラはあるので、油断をすると波をザブンとかぶることになる。しかも、徐々に潮が満ちてくるので時間が経つにつれ波に洗われる回数が増えてくる。

片瀬 野湯 こぼれ湯 温泉 源泉

ゆっくり休んでる時に大波が来ると

片瀬 野湯 こぼれ湯 温泉 源泉

急いで腰をあげないといけない

ただ波をかぶると寒いかというと意外とそうではない。打ち寄せてくる海水はすでに温泉と混ざっているので温かい。波の出るプールくらいの温度で悪くない。だが、後ろからどんどん流れてくる源泉の熱さはそうはいかない。波が定期的に打ち寄せている時はいい具合に湯温が保たれるのだが、15秒くらい波が来ないともう激熱である。

片瀬 野湯 こぼれ湯 温泉 源泉

背中熱っ!

あと途中で気がついたのだがよく見ると正面の海、数百m先に釣り船(漁船?)がいる。ちょうどいい漁場なのだろうか向かって左の方に進んで行ったと思ったら今後は逆方向に向きを変え戻ってくるのでずっと目の前を漂っている。気まずい。

片瀬 野湯 こぼれ湯 温泉 源泉

この距離に船がずっといる。あちらからもこっちを目視できているはず

片瀬 野湯 こぼれ湯 温泉 源泉

拡大図

陸側からは見えにくい位置なので安心して入浴していたが海側から丸見えになるとは。硫黄鉱山跡で泥だらけになった体も波に飲まれて綺麗になったし、何より温まった。潮も満ちてきたのでそろそろ上がろう。

片瀬 野湯 こぼれ湯 温泉 源泉 ドローン

野趣あふれる

片瀬 野湯 こぼれ湯 温泉 源泉

いい湯でした!

本当はサーモ画像を元に東伊豆エリアで目星をつけた場所もあったので未到源泉探しも行いたかったが今日のところはこれで終了。また別の機会にしよう。そろそろガチで前人未到温泉を見つける気合いで今シーズンには臨んでいる。その時を夢見て伊豆急に揺られて帰宅した。

 

【今回の野湯探訪ダイジェスト】


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