前人未到温泉

秘湯どころじゃない、人類未発見の温泉(源泉)を探して”史上一番風呂”に入ります。

晴れて、マニアになりました。【街中のいらすとや使用例マニアへの道】

思えばマニアに憧れていた。

マニアの話は面白い。その話の対象がなんであれ。たとえ自分には興味のない分野だったとしても、その話に込められている熱量に引き込まれる。そんな魅力がマニアにはある。「「自分もマニアになれるだろうか」」。30後半にしてそんな思わぬ願望が心に浮かびマニアを名乗ることに。今回は『いらすとやマッピング』活動の番外編、街中のいらすとや使用例マニアになるまで、をお伝えしたい。

How To マニアになるには

2023年4月29日(土)、30日(日)に幕張メッセで行われたニコニコ超会議。多種多様な「好き」が集まる巨大イベントのコンテンツの一つとして開催された、マニアたちの饗宴『マニアフェスタ』「街中のいらすとや使用例マニア」として参加してきた。

ニコニコ超会議への初参加がまさか出展者側とは…

「マニアフェスタ」にマニアとして申し込んで出展するために何か必要な条件があるわけではない。特にルールはないので、自分がマニアだと胸を張って言えるならそれでいいのだろう。このイベントの存在を知り参加を決めたものの、1つ大きな問題があった。これまで自分をマニアだと思って「いらすとやマッピング」の活動したことはなかったのだ。果たして自分にマニアを名乗る資格があるのだろうか。

「マニア」とは何をもって言うのだろうか?

人それぞれ、人生ですごく好きなものができることはあるだろう。でもそれって普通は”趣味”というのでは?僕にとっても「いらすとやマッピング」活動はまさに趣味だ。”趣味”と”マニア”は違うだろう。そう考えると、趣味が新しくできことはあっても、普通はマニアにはならない。じゃあどうしたらマニアになれるのか?自問自答の結果、出た答えは『他人(外向き)に自分の趣味領域について解説する心構えがあるかないか』だ。

趣味を突き詰めた延長にマニアがある訳ではない。多分

マニアを名乗るということは『アマチュア専門家』を名乗ることだ。趣味である内は自分だけで、または仲間内で楽しめばいいが、専門家はそうはいかない。専門家には周囲からの質問に応える責務が出てくるのだ。アマチュア専門家であるマニアもその責任から逃れることは出来ない。「マニアになる」とは人に説明する義務を負うということなのだ。

そういうこととします。

そして、もちろんその分野についての深い知識と愛も必要だ。マニアが専門分野内のことを質問されて答えられないと周囲をがっかりさせてしまう。人々はマニアを変人であり、超人だと思っている。『この分野のことを何でも知ってるんだろうな』と。それは幻想である。しかしそんな幻想、つまりマニア像を簡単に打ち砕いていいのだろうか。いや、精一杯それに応えるのがマニアだろう。

そこでマニアフェスタ当日までに自信を持ってマニアを名乗れるよう、以下を準備することにした。

①同人誌の作成

②ブース展示物の用意

③想定問答の用意

①②でいらすとやマッピングの活動内容や魅力を伝え、③で来訪者の疑問に答える。

こうして自分の活動を初めて人に説明するための準備が始まった。

そもそもこういうイベント行ったこともないんよな…

とはいえこれまでコミケとか同人誌などの界隈にほとんど接点がなく生きてきたので、同人誌作りやブース設営は全く未知の分野だ。通勤の行き帰りの時間を使い、ネットで同人誌の作り方や他イベントの様子を調べてブース設営の参考例をリサーチ。必要な作業を洗い出した。同人誌の中身は過去の「いらすとやマッピングまとめ」(リンク→)からピックアップし、Adobe InDesignを使って構成。ブース設営に必要そうな展示道具はハンズの「店舗用品」コーナーで買い揃えつつ、パッと見で活動内容が分かるようにブースに掲げる大きなバナー類もキンコーズに印刷を発注。これ、結構やることあるぞ…。

↓過去のまとめ

tori-kara.hatenablog.com

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ブースの前部分につけるバナー

垂れ下げバナー

そして同人誌の表紙といえば可愛いイラストだろう、という勝手な思いこみで色々調べた結果、いらすとやのイラストを絵師さんのタッチでオリジナルで描き下ろしてもらうのはどうかと思い至った。絵師さんに発注なんていう自分に関係なさそうなイベントが人生に起こるとは。しかしもうイベントまで1ヶ月半くらいしかないので、これから発注してると印刷所への入稿締め切り的にちょっとタイトだ。そんな焦ったスケジュールで発注して絵師さんを急かしたくないので諦めようとしていたが、調べていくとこんなファンアートを見つけた。

いらすとやの中二病の女の子(by あいうち)

#いらすとや いらすとやの中二病の女の子 - あいうち@C101-東ソ24aのイラスト - pixiv

まさにこういうこと!!

しかも、いらすとや敬意を評して本家と同様にフリー素材として使用してよいとのこと。神!今回は絵師さんのクレジットを入れてこれを使わせてもらい、絵師さんへの発注は次回の同人誌第二巻への宿題とした。いらすとやファンに救われました、ありがとうございます。

イラストかっこいい!

これを表紙に配置し、原稿は完成!余裕を持って印刷所にネット入稿できた。

印刷所は地元の会社にした

同人誌印刷・グッズ制作|株式会社栄光

 あとは想定問答の作成だ。ブースに来てくれた人の期待を裏切らないよう、予想される質問の答えを用意しておこう。そして、あたかも「どんな質問にもすぐ返せるくらい知識豊富でしゃべりの上手い人」みたいな感じを出して語るのだ。今まで社会で学んだはったりのスキルをどうでもいい場面で生かそう。

回答を考えておこう

趣味でやってるだけなので「いや、大した理由はないです…」と答えたくもなるが、そんながっかりレスポンスをする訳にはいかない。嘘でない範囲でしっかり納得できる答えを用意する。よし、完成だ。これでついに、マニアになる準備ができた。

いらすとや判別チャートもボードに切り出した

そして当日。

事前に大抵のものは会場に郵送しておいたが、さすがに段ボールに入らなかった2mくらいのポップスタンドの軸を持って会場入り。

持ち運びのことを全く考慮されていない、折りたたみできない2mの棒

ニコニコ超会議には初めてきたが、さすが幕張メッセ全体を使用したイベント。デカすぎる。かろうじて「界隈」が小さく存在しているような分野からから唯一無二の領域まで、マニアが一同に会した光景は壮観だった。。全員が『この分野のことは俺に何でも聞いてくれ』と胸を張る人間なのだ。(想像です)。頼もしすぎる。

参加マニア一覧

荷物を受け取り自分のブースに到着すると、隣のブースでは三人ですでにテキパキとブース設営に取り掛かっていた。「マニア」というイメージから個人での出展のイメージでいたが、周りを見るとサークル的集まりだったり2人以上での出展が多いようだ。1人じゃ途中で休憩もできないもんな…。

せっかくのりあるイベント。いらすとやマッピングはiPadで触れるようにした

なんとかブース設営にメドが経ってきたころ、ニコニコ超会場が開場。あのコミケ『始発ダッシュ』を彷彿とさせる熱気で人が場内に押し寄せてきた。さあ、ブースにやって来てくれる奇特な方の案内をしながら、他のマニアの人たちと交流しよう。いろいろ気になる人がいるんだよなぁ。…と思えていたのは開場後最初の一時間だけだった。実際は人がほぼ途切れることなくやってくるため、開場中はずーっと来訪者に活動内容を話し続ける感じだった。こっちがお金払って話を聞いてもらいたいくらいなのに、いいんですか!?正直、ニコニコの文化の本流ではないマニアフェスタという企画を超会議内で行って人がそんなにやってくるのだろうか、と思っていた。しかしそもそもの来場者が莫大だし、ニコニコ超会議にまでやってくるような人は興味の範囲がとても広いようで、いろんなマニアの話を嬉々として聞いているようだった。説明している各マニアの顔もいい。最高に温かくて楽しい場所だ。今まで自分の活動を人に説明したことなんてほぼなかった僕だが、初めて人からのリアクションを受け取り、とても新鮮な時間だった。人に話して初めて客観的に分かるのこともある。

ただ、そんな来場者数となると昼飯を買いに行くにも難儀だ。『今、外してます』表示は作ってきたが、その間ブースを完全に空けてしまい来客を逃すことになる。隣のブースは2日間「食べ方学会」さんだったのだが、しっかりと常に複数メンバーでブース運営が行われていた。「食べ方学会」は僕もメディアで見たことあるくらいの方々で、さすがそういうマニアは体制も違う。…そう思っていたその時『何やってんの?』と声をかけられた。ふと見ると『食べ方学会』のブースに会社のよく知ってる人がいた。食べ方学会のブースの手伝いに来たようだ。お互いがお互いの活動を知らなかっただけでマニア同士だったのだ。

『ここで何やってるですか!?』

『それはこっちのセリフだよ!』

これが若い男女なら恋が始まりそうなプライベートでのドラマチックな出会いだが、残念ながらおっさん同士がなぜか奇跡的に出会っただけだ。人生で何回かしかないであろう「ドラマチックな出会い」をこんなところで無駄に使ってしまった。

2日目。開場前に自分のブースの前でフリースタイルノートブック撮ってたら後ろにいた。

他にも、かつて一緒のチームで働いていた別の会社の人がたまたま通りかかり『目を疑いました』と声をかけてくれたり、いらすとやの女の子のコスプレを普段しているというレイヤーさんが来てくれたり、リアルイベントに来ないと起こらないおもしろにも出会えた。

 

マニアフェスタも基本は頒布(有料無料問わず、広く配ること、有料の場合が多い)をしているブースが大半なのだが、今回の自分のブース出展は活動の紹介や同人誌の無料配布、ということにした。このいらすとや同人誌を有料にするには、使用点数的にいらすとやさんの許諾が必要だし、そもそも各使用例の作成者にも本来許諾が必要だからだ。今後同人誌の巻数を増やすにしても方針は変わらないだろう。しかしブースにやってきてくれた方々の中には思わぬ声があった。

『何か課金できるものありますか?』

と。

活動を面白がってくれて、何か応援したいのでお金出せるものありますか、の意だ。なんという温かくて嬉しいお言葉。幸せすぎる。「好き」と思ったものに対してせめてお金を払って応援したい払わせてほしい、という気持ち、実に共感できる。思ったことある!なるほど、それが他人から自分に向けられるという想定は全くしていなかった。何か今後、有料でグッズを販売する予定はなかったが、イベントに参加する時は何か考えたほうがよいかもしれない。

 

それにしても温かいイベントだった。初めて参加してわかった改善点はたくさんあったし、今後はマニアとして胸を張って名乗れるよう、さらにいらすとやを追究していきたい。

イベント全部終わって来場者全員帰ったあとヘトヘトで撤収して外出たら、まだいろんなジャンルの同好の士たちが会場の外で勝手にどちゃどちゃ盛り上がっていた。最高だ。