前人未到温泉

秘湯どころじゃない、人類未発見の温泉(源泉)を探して”史上一番風呂”に入ります。

国の天然記念物な温泉に入ろう!奥鬼怒・湯沢噴泉塔の湯と広河原の湯

湯沢噴泉塔 広河原の湯 野湯 温泉 秘湯

今回は天然記念物から湧き出す野湯に入りに行ったら、もっととんでもないモンスターがいたのでそこで熱湯を浴びてきた報告です。

モンスターは一旦置いておいて話を進めると「天然記念物」というのは自然によって生み出されたものの中から学術上の価値が高いものを保護するために指定される。トキとかイリオモテヤマネコとかマリモとか動物&植物のイメージだが、地質・鉱物部門での認定もある。そうなると火山大国ニッポン、当然その部門では火山関連の天然記念物も多い。

天然記念物

ちなみに、国指定天然記念物の登録数最多は意外にも「山口県」

その中で直接、温泉に関係のある天然記念物を数えると登録は12個ある。

「夏油温泉」「玉川温泉」「白骨温泉」など有名温泉地にまつわる登録が多いが、今回の「湯沢噴泉塔」など温泉地に紐づけられていない場所もある。(※湯沢噴泉塔の「湯沢」とはスキーや温泉などで有名な新潟の湯沢町ではなく、栃木の川の名前である。)

温泉街や商業施設はないのに温泉に関係する天然記念物がある。それが何を意味するかという、とそこにはただ温泉が湧いている場所がある。つまり野湯があるということである。さあ話は繋がった!その天然記念物な野湯ともう1つの野湯「広河原の湯」に入るべく特急きぬがわで鬼怒川温泉へ向かった。

忘れられゆく天然記念物な温泉へ

鬼怒川温泉駅

そもそも鬼怒川温泉にも初めて来た

初めて降りた鬼怒川温泉駅はおそらく近年改修されたであろう小綺麗な外観。温泉街の駅特有の浮かれた空気が流れている。いい。ただこの日の旅程はまだ半分。そんな浮かれた駅前を素通りしてバス乗り場へ。小型なバスに乗り込むと平日なのもあって車内には浮かれた雰囲気はなくむしろ生活感がある。途中、何もない広場で謎のトイレ休憩10分を挟みつつ、奥鬼怒温泉郷の手前「川俣温泉」に到着。ここが天然記念物温泉へのスタート地点となる。

川俣温泉 鬼怒川温泉 日光

「奥」鬼怒の名前通り鬼怒川温泉からはかなり遠い

日光市営バス 川俣温泉 バス

川俣温泉へ向かう日光市営バスはこういうワゴンタイプ。乗客はほぼいなかった

上記の通り川俣温泉は秘境温泉な立地であるため公共交通期間を使う場合、鬼怒川駅からのバスの本数が少なく日帰りでは目的の野湯まで行って帰ることが出来ない。なので今回は川俣温泉で前泊をして翌朝早くに出発することにした。

泊まった宿ではグレープフルーツにサーモン・リンゴ・野菜・酢の物が載った不思議な料理が出てきた。アバンギャルド。

朝6時。日の出とともに歩き始めた。この日は11月上旬で朝はもう寒いが、こういう日は歩き出すとすぐに熱くなるのが山歩きの常。レイヤリングを調整しちょっと肌寒いくらいの服装で歩き出した。

川俣温泉 紅葉

紅葉した葉が雨に濡れた道路を染めて美しい。

天然記念物・湯沢噴泉塔へ向かうルートを示す看板はほぼ朽ちかけていた

湯沢噴泉塔へは宿からさらに約1km、平家平温泉というバス停近くにスタート地点がある。国の天然記念物ともなれば保護されつつも地域の観光資源として利用されていてもいいはずだが、見つけた看板はボロボロ。「湯沢噴泉塔 歩道入口」と書かれているが、よく見ないと気づけないレベルだ。それもそのはず、湯沢噴泉塔までの区間はもともと歩道(登山道)が整備されていたが現在はそのルートは公式にはほぼ廃道扱いになっているようだ。

広河原の湯 湯沢噴泉塔 マップ

入り口から途中の広河原の湯までは点線で書かれた「難路」、その先の噴泉塔までは「行くことができる」とだけ記され、道のラインさえない

国の天然記念物となると自治体や観光協会など公的なウェブサイトに掲載されるものだが、湯沢噴泉塔は日光市のHPのどこにも記載されていない。国の天然記念物なのに。もはや半放置状態だ。いや、人が来るから保護の必要が出てくるわけで人が来ないなら来ないで何かをする必要はないのか。そっとしておくことが一番の保護なのかもしれない。
そしてこの先を歩いてみて分かったが、登山地図通り噴泉塔までの道はもはや成立しておらず危険な場所が何箇所もあった。ハイキング気分で行けるものではなく、沢歩きができる装備は少なくとも必要なので行かれる方はどうか注意してほしい。  

川の中を歩ける装備が必要です

また、通常の野湯探訪ではいつも人工衛星のサーモ画像も同時に確認しつつ行う。温泉を探す時の経験値を貯めるためだが実は日本の全エリア分のデータがあるわけではなく、この奥鬼怒エリアはがない。今回は普通に野湯を楽しもう。

ぎりぎりデータ外。

案内板はボロボロだったが、指し示された方向に進むと立派な橋が。かつては噴泉塔に向かう観光用の遊歩道として人がそこそこやってきていた時代もあったのだろうか。そんな名残りを感じさせる。ほそーくなった鬼怒川(上流)を渡ってスタート。この鬼怒川に流れ込む湯沢を遡っていく。

鬼怒川 湯沢噴泉塔

橋の下の小さい川が鬼怒川だ

湯沢噴泉塔 広河原の湯 野湯

最初は広くて歩きやすい森の道

湯沢噴泉塔 広河原の湯 野湯

こういう道をずっと歩ければいいのだが野湯ではそうはいかない

人気のない山道を歩いているとすぐ近くで突然ピィーーという鳴き声が。11月は鹿の繁殖期である。秋になるとオス鹿がメス鹿を求めてこの鳴き声が山に響く。俳句では鹿の鳴き声は秋の季語でもある。紅葉に染まった山を鹿の鳴き声を聴きながら進んでいく。向かう広河原の湯と湯沢噴泉塔の湯は野湯の世界ではメジャーな方ではあるのだが、日本に100人いないはずの野湯愛好家くらいしか来ないのだろう、道はかなり荒れていた。

湯沢噴泉塔 広河原の湯 野湯 道

木が倒れていて進めないので迂回して進まざるを得ない

湯沢噴泉塔 広河原の湯 野湯 道 崩落

ここも地面が崩落している

湯沢噴泉塔 広河原の湯 野湯 道 崩落

木の根を頼りに崩落箇所を進む

湯沢噴泉塔 広河原の湯 野湯 道

険しくも美しい栃木県最奥部

この時期にここを訪れたのはかつて写真で見た噴泉塔の湯が紅葉時にとても映えそうだと感じたからだ。紅葉に囲まれる秋の湯沢噴泉塔をドローンで撮りたい、そう思っていたのだが道中で撮影のために取り出したところ、調子が悪く飛ばすことができなかった。なんてこった。残念だが空撮は次の機会にしよう。

ドローンは都内で飛ばすことが難しいので動作チェックがしにくい…

しばらく進むと道は沢沿いになった。噴泉塔へ行くルートはこの湯沢と何度もクロスしている。川を渡る必要があるのだ。もともとは橋が掛かっていたそうだが度重なる台風で今は橋は一本も掛かっていない。川の水はかなり冷たいが覚悟を決めて沢歩き用シューズに履き替えよう。 

湯沢噴泉塔 広河原の湯 野湯 道 湯沢

山々に隠れていた朝日がちょうど顔を出したころ、道が川にぶつかった。

湯沢噴泉塔 広河原の湯 野湯 橋

大雨で橋が流されて今はない、は「野湯に向かう道あるある」でもある

湯沢噴泉塔 広河原の湯 野湯 湯沢

この時期の渡渉はなかなかキツい

地形図に示された本来のルートは崩落が激しすぎて進めるレベルではない場所もあり、途中からはむしろ道を無視して川を歩いた方が安全だった。何度も川を渡りながら上流に向かい歩いていると初めて広い河原に出た。ここにその名の通り「広河原の湯」がある。

広河原の湯 野湯

川の向こう側に人工物が見える あそこが広河原の湯だ

広河原の湯 野湯

広河原の湯。非常に立派な湯船が作られている

広河原の湯 野湯 温泉

紅葉見ながらの入浴も気持ちよさそうだ

今までに訪れた野湯の中で最も整えられた湯船。野湯界では非常に洗練されたビジュアルといえる。これならワイルドすぎる泥だらけ野湯はちょっと…という野湯ライト層にも是非オススメしたい。野湯と露天風呂の中間的なバランスの取れたいい湯船だ。

広河原の湯 野湯

湯温は41.7℃と最適!

しかもお湯の温度も絶妙。源泉温度は50℃を超えているのだが、ごくわずかな沢の水とあとは外気によって冷やされ40℃ちょっとにキープされている。天才野湯職人によって計算され作られた湯船に違いない。そしてこの湯船の脇に源泉が湧いているのだがその部分はこうなっている。

広河原の湯 野湯

広河原の湯 野湯

広河原の湯 野湯 源泉

源泉が出ている部分はコンクリートのようだ

もともとは宿があってそこに湯が引かれていた、という情報はないのだが野湯にしては非常に立派な機構がコンクリートで作られている。やはり野湯を愛するがあまり、ここまでコンクリートを運び温泉の注ぎ口を作った人物がいるのだろうか。しかも湯船までコンクリート造にはせず、地面を掘り下げて石で囲むと言う自然のままの野趣を残しているところが流石である。野湯を解しない人物が整備していたら面白みのない湯船になっていただろう。

広河原の湯 野湯

おかげで美しい風呂に浸かれます

そんなことを考えていると不意に喉に違和感を感じた。喉がイガイガして風邪の引き始めのような感覚。突然風邪を引いてしまったのだろうか。いや、そうではない。沼尻元湯などの野湯に行った時にも同じような喉の違和感を味わった。これは硫化水素だ。ザックにつけていた硫化水素探知機を源泉の湧き出し口に近付けて見ると…

広河原の湯 野湯 硫化水素 濃度

10.0ppm以上は人体に害のある硫化水素濃度である

探知機を近付けた途端にアラームが大音響で鳴り始めた。硫化水素濃度は10ppm超えとやはりかなり高い濃度の硫化水素が源泉と一緒に噴出しているようだ。

広河原の湯 野湯 硫化水素濃度

湯船の水面近くは1.6ppm 特に問題のない濃度

どうりで喉が痛くなるはずである。ガスマスクを携帯していたので着用しようかとも思ったが湯船近くの濃度は低かった。広河原の湯は開けた空間のため風通しがよく、湯船に入る分には問題なさそうだ。喉に違和感が出た時は源泉の湧き出し口を撮影していた時だった。皆様、源泉湧き出し口にはご注意を。

広河原の湯 野湯 湯船

さて入りましょう!

足を入れると、とても熱い。温度計で計った時にはちょうどいい温度になってはいたものの、水面近くはとても熱い。足でかき混ぜつつ湯船に横になった。

広河原の湯 野湯 温泉

あったかい。もう出れない。

湯船の中でジタバタしてお湯をかき混ぜると最高の湯加減に。横になればお湯から体も出ない水深もあり快適だ。湯船の底もドロドロではなくスッキリしている。たまに底を攫って管理されているのだろう。非常に優等生な野湯である。

広河原の湯 野湯 温泉

上がってきた朝日が湯に差し込む

広河原の湯 野湯 野湯

軽く白濁した湯、そして湯船に浮かぶ紅葉した葉

上品さと荒々しさのバランスのいい湯だった。11月なので外気は裸だとめちゃくちゃ寒くて湯船から出たくないのだが、そろそろ噴泉塔に向かおう。冬場に野湯から上がる時は、すぐそばにタオルを置いておいて可能な限り水を素早く拭き取るのが定石である。ここでもたつくと温泉に入ったにもかかわらず、体を冷え切らしてしまうことになるので野湯に入る時には覚えておいて欲しい。震える体をダッシュで服にねじ込んで出発した。

広河原の湯 湯沢噴泉塔 野湯 温泉

寒いが太陽が出ていて助かった

広河原の湯 湯沢噴泉塔 野湯 温泉

湯沢をさらに遡る 沢幅はさらに狭くなってきた

この川が「湯沢」という名前なのは温泉が湧いていることがわかって後付けで名付けられたのだと思う。この奥鬼怒エリアがただえさえ秘境な上にいくつもある川の1つのさらに奥深くに温泉が湧いているとよく見つけたものだ。ただ実は過去にこのエリアには一時的ににわかに活況づいた時代があったのだ。
というのも、実はこんな場所に高品質な金が取れる金山が見つかったのだ。この湯沢から2つくらい隣の川筋に西沢という川があり、そこに西沢金山が作られ山の中に1300人が暮らす大きな集落が出来ていた。今となっては鉱山跡が残るばかりで何もない山になっているが、その当時の金山探しによって1908年に湯沢噴泉塔が発見されたらしい。世の中の温泉は数百年前に見つかったものばかりだが、こういう近年に温泉が見つかるという出来事も確実にあるのだ。まだ人に見つかっていない前人未到温泉もまだきっとあるはず。

渡辺渡 

湯沢噴泉塔を発見した冶金学者・渡辺渡(wikipediaより)

その当時に広河原の湯も同時に見つかったのだと思うが、実はこの湯沢にはそれ以外にもそこかしこに温泉が湧いている。それを観察しながらさらに上流へと向かう。

広河原の湯 湯沢 噴泉塔 野湯 温泉

川べりに湧いていたり

広河原の湯 湯沢噴泉塔 野湯 温泉

湯気がモクモクと上がっているところも

これだけ野湯がたくさんあるとなれば、他にももっとあるのかもしれない。今回はこの湯沢しか探索は出来ないが別の機会に他の沢筋も探してみる価値はあるかもしれない。そして川を歩いているとGPS上ではあと200mほどで到着というところまでやってきた。川は切り立った谷の谷間を流れている。登山的に言えばゴルジュ。いよいよ上流も上流という景色だ。

広河原の湯 湯沢噴泉塔 野湯 温泉

噴泉塔の手前は沢の両側が断崖になっている 迫力のある美しい場所だ

広河原の湯 湯沢噴泉塔 野湯 温泉

川の水が明らかに白みを帯びてきた!

しかしこれまでと同じように川の中を歩いて進んでいたのだが、あと100mほどというところで水深が深くなっている箇所があった。川幅が狭くなっている分、水深にきており胸の高さくらいまであるようだ。流れは速くないので荷物を軽くすれば全然行けるが、大きなザックを背負ってだと機材の心配があるのでやめておいた。地図を見ると本来のルートとして、この断崖を登って降りる道が別途あるようなので探すとボロボロの階段を発見した。

断崖の周囲を探すと矢印の場所に階段があった

ただ、その道への入り口はもはや地図がないとそこにあるとわからないレベル。荒廃しすぎて自然に戻りつつあるようだ。あまりにも崩壊が激しく危険なルートになっていた。次回来る時はこの道を通りたくないので、あの水深が深い部分を突破できるように手前で大きな荷物をデポして進むようにした方が良さそうだ。
断崖を乗り越え進んでいると、ついにその先に大きな湯気が見えた。

湯沢噴泉塔 野湯 温泉

あれが目的地!

谷間を流れる沢からかなり迫力のある湯気が上がっている。高温かつ大量に温泉が湧いているのだろう。はやる気持ちを抑えつつ沢に降りた。

湯沢噴泉塔 野湯 温泉

10mを超える湯気がもうもうと上がっている 間近で見ると大迫力

天然記念物である噴泉塔はどこにあるのだろうか。やはりあの湯気の元か。もっとよく見るために近づこうとしていたその時、意外な場所に噴泉塔があることに気がついた。

湯沢 噴泉塔 温泉 野湯

さっきの写真より少し下に向けて撮影 噴泉塔の位置がわかるだろうか

湯沢噴泉塔 野湯 温泉

あ、ありました

ものすごい地味だ。湯気も出ていないし大きさも思っていたより小ぶり。存在を主張するどころか、色合いも周囲に溶け込むステルスぶり。天然記念物は植物でいえば見上げるほどの大木、動物でいえばめったに見れない希少な野生動物、みたいなイメージであるがオーラの過多は天然記念物それぞれである。

湯沢 噴泉塔 温泉 野湯

この突起から温泉が少量だが湧いている

湯沢 噴泉塔 温泉 野湯

これが天然記念物…

いやいや、あくまで天然記念物において重要なのはビジュアルでははなく学術的価値である。本来何も知らず温泉に入りに来てこんな温泉が湧き出る塔があったら興奮していただろう。天然記念物ということでハードルを上げすぎてしまった。長野県の北アルプスの山奥にある野湯「湯俣温泉」を訪れた際に、同じく温泉成分が固まって出来た天然記念物の「噴湯丘」を見たのだが、これが凄かった。なのでついハードルを上げてしまった。

湯俣温泉 天然記念物 噴湯丘

国の天然記念物「高瀬渓谷の噴湯丘」。でかい。

噴泉塔というのは時間をかけて成長して伸びていくものであるがwikipediaによると1mを超える塔は世界的にも珍しく学術的に貴重」とある。まだ60cm~70cmくらいしかないが、もっと成長していくはず。この噴泉塔の成長を見守りたいと思う。さて、湯気がモクモクと上がっていたのはこの噴泉塔の奥である。どうなっているのか。

湯沢噴泉塔 野湯 温泉 

なんかすごいのある!!

湯沢噴泉塔 野湯 温泉

かなりインパクトあるビジュアル!

噴泉塔の先には小さな滝と滝つぼがあり、その脇にこの白いモンスターが鎮座していた。噴泉塔は源泉が地面から吹き出すことで上に上に伸びる塔となっていたが、こいつはおそらく上部に源泉が湧いているのだろう、まるでつららのように温泉成分が吊り下がっている。

湯沢噴泉塔 野湯 温泉

温泉成分で出来たつららからは絶え間なく湯が滴り落ちている

すごい迫力だ。まるで怪物が大きな口を開け牙を剥き出しに襲って来ているようにも見える。したたる湯はまるでモンスターの牙から垂れる唾液だ。近寄って一本一本を観察すると、それぞれの表面はツルッと滑らかではなく、イボ状の凸凹が出来ているものが多い。

湯沢噴泉塔 野湯 温泉

よく見るとちょっとグロテスク

湯沢噴泉塔 野湯 温泉

こことかダークファンタジー感ある

すごい。名前が分からないので「これ」としか言いようがないがこれ、すごいぞ。噴泉塔にははっきりした名前がついているのに、こっちに名前がついていないのがおかしいくらいの圧倒的な存在感。ダンジョンの真のボスはこっちだったのか。モンスターから滴る温泉は絶え間なくその下の滝壺に降り注いでいる。さてこの湯船に入ってみよう。

湯沢噴泉塔 野湯 温泉

滴り落ちる温泉と川の水が混ざり合い滝つぼが湯船になっている

湯沢噴泉塔 野湯 温泉

入りましょう!

先ほど入った広河原の湯では湯気はあまり立っていなかったがそれでも最適な温度だった。これだけの湯気を出しているとなると、かなり高温の源泉が流れ込んでいるようだが湯加減はどうだろうか。震えながら服を脱いで湯船に足を踏み入れた。

湯沢噴泉塔 野湯 温泉

えーと…

湯沢噴泉塔の湯 野湯 温泉

めちゃくちゃ冷たい!

くそ冷たい。

隣のモンスターからの熱気は肌にビンビン感じるが、滝つぼに流入する水の量が多すぎて太刀打ち出来ていない。湯船と言える温度ではなく、ただ冬の滝壺に入っているとしか思えない肌感。修行中の僧侶が入る水温である。いかんともしがたい温度だが、出来るだけモンスター側に寄って入ればマシかと思い近寄ってみたのだが…。

湯沢噴泉塔 野湯 温泉

熱っつ!!

今度は鬼のように熱い。
まるで女王様に蝋を垂らされているかのようだ。水滴が体に触れるだけで声が出るくらい熱いのでおそらく70℃近くあるのでは。熱すぎる。ここまで書いて、そもそも溶けた蝋を垂らされたことがないな、と思い調べてみると『SMプレイ用の蝋燭は50〜60℃と低温で溶けるようになっている』とのこと。ああ見えて女王様はそんな配慮をしてくれているのか。要らぬ知識を得てしまった。

 それはともかく、滝つぼの水はめちゃ冷たいし垂れてくる湯は熱すぎて両方どうすることも出来ない。寒い。野湯に来るときにはあまりそこのことは調べないようにしているのだが、滝つぼに入っている写真もあったのでもう少し温かいのかと思っていた。誤算だ。

湯沢噴泉塔 野湯 温泉

この位置だと温泉からの熱気に守られてちょっと温かい

ただ、この周りには他にも数カ所温泉が湧いている箇所がある。どれも同じように源泉は熱そうだったが浸かれないにしても、川の水とうまいこと混ざっていい湯加減で浴びれるところはないだろうか。

湯沢噴泉塔 野湯 温泉

噴泉塔からの湯と川の水が混ざるココとか

湯沢噴泉塔 野湯 温泉

あと、その脇のこことか

気温は上がってきたが谷間で日が当たらないので寒い。なんとか体を温めてから帰途につけないだろうか。この2ヶ所をパパッと確かめよう。

湯沢噴泉塔 野湯 温泉

あーーー!!(冷)

湯沢噴泉塔 野湯 温泉

あっーー!(熱)

いや全然ムリ。噴泉塔からの湯はやはり川の水に負けてしまっているし、その脇はほぼ源泉そのままで熱々。帯に短し襷に長し。やはりあの広河原の湯のようなちょうど良い湯温の野湯作りは奇跡的な所業なのだ。こういう時は自分の方から野湯に歩み寄るしかない。それが野湯を楽しむということだろう。

湯沢噴泉塔 野湯 温泉

こうやって熱い源泉を手でピチャピチャかけて浴びました

湯沢噴泉塔 野湯 温泉

温まるどころじゃない

紅葉と滝と湯気が織りなすは美しかった。寒さに関しては夏に来れば水浴びも兼ねてちょうど良いかもしれない。緑に囲まれた噴泉塔の湯も美しいだろう。

湯沢噴泉塔 野湯 温泉

今度は夏に来てドローンを飛ばそう

次回は秋に行った土湯温泉&猿ヶ京温泉での源泉探索の成果を。ほぼ未踏温泉という野湯にたどり着きます。あと2020シーズンの総括と次シーズンの展望を。遠隔調査で未踏温泉を見つけてしまったかもしれません!!

 

↓【今回のダイジェスト】↓


天然記念物な野湯に入ろう!広河原の湯&湯沢噴泉塔の湯(栃木県・奥鬼怒)