前人未到温泉

秘湯どころじゃない、人類未発見の温泉(源泉)を探して”史上一番風呂”に入ります。

温泉を探す旅 本格スタート!(群馬・猿ヶ京)

思いついた時期が秋だったもんで、春になるのを待っていた未到温泉の探索もいよいよ本格開始。ついにその活動報告をしていく。

 

…が、その前に書いておかないとならないことがある!

この活動において非常に重要な出来事が起こったのだ。

 

ある日曜、朝、歯を磨いていると謎の電話番号から携帯に着信があった。

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04から始まる番号 住んでいたことがあるからピンときた。埼玉だ。

知らない番号だったが、とりあえずすぐに折り返してみた。

 

私「お電話頂きましたか?」

相手「ああ、福田重雄といいます。」

私「はい…え!?」

 

おお、マジかよ!あの福田さんである。

 

いや誰だよ、という話だと思うが、聞いてほしい。電話の相手は師匠だったのだ。

 

このブログで言う「師匠」とは、僕がこの温泉探索活動をするのきっかけとなった本の筆者・福田重雄さんだ。

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福田重雄 著「衛星画像で読み解く日本の温泉82」

本の筆者紹介の一部を借りると

福田さんはJAXAの外部研究員で科学ジャーナリスト。

衛星画像の利用普及と教育支援のために活動もされている、とのこと。

 

このブログの最初の記事でも活動開始のきっかけとして書いた。

tori-kara.hatenablog.com

 僕が本を読んで感銘したので、このブログでは敬意を込めて「師匠」と呼んでいるが、実際には何の面識もない。勝手に呼んでいるだけだ。

そんな状況なのに、直接、ご本人から電話をもらってしまった。

 

電話越しに師匠はこう言った。

「一般の人で衛星画像をわざわざ欲しがるなんて、どんな人なのかと思って電話してみました。」

 

本の中に『衛星画像データが欲しい人には提供する』と書いてあったので、料金を振り込み、住所と連絡先を送ったところ、データの入ったディスクが郵送されてきていた。

確かに衛星画像データもくれ、と言ってくる一般人はなかなかいないだろう。

だが、まさか連絡があるとは!

恐縮である。

 

どんな人間なのか、本の購入者に電話してみよう、というマインドはさすが研究者だ。好奇心に満ちておられる。

 

福田さんとの話の内容はざっくり言うと

・目をつけた場所に探しに行って実際に温泉があると最高に楽しいので、どんどんやったほうがいい

・ブログもたまたま見ましたよ

・amazonで著書についていた一ツ星レビューを気にしていたが、喜んでいる人がいてよかった 

・5月にまたアメリカにいくからその前に電話しました

・本当にどんどん行ったらいいよ

ということだ。

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以前、ブログでも触れた著書の一つ星レビュー。やはり少し気にされていた。

とりあえず、Amazonのレビューには代わりに僕が高評価レビューを投稿しておいた。レビュー本文で熱く本の魅力を述べたので興味があれば見てほしい。

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人生で初めてレビューを投稿した
衛星画像で読み解く 日本の温泉82  北海道から九州までの天然温泉を探る

衛星画像で読み解く 日本の温泉82 北海道から九州までの天然温泉を探る

 

衛星画像などから資源探査や植生分布などを調査することを「リモートセンシング」というが、その分析を基に現地を探索することを「アースウォッチ」と呼び、師匠も実際に温泉探索に行っている。本家本元である。

本の中にも師匠が5cmくらいの水深の温泉沢に浸かる姿もあった。

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野湯の醍醐味に満ちた、いいショットである。

結局1時間近く電話で話し、その後もこの5月までに3回連絡をし合っている。買った本の著者から連絡が来るなんてことはなかなかないことだし、非常に嬉しかった。

勝手に師匠呼ばわりしていたが、ここで今後の活動を報告できればと思う。

温泉探索、開始!

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春が来た。

というわけで、春になり、いよいよ探索を開始する。

今回の探索地は群馬県みなかみ町にある猿ヶ京温泉エリア。上越新幹線・上毛高原駅からバスで30分ほどなのでアクセスは比較的、容易だ。

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赤谷湖から赤谷川を遡上して探していく

 そもそも、温泉地なので源泉湧き出しポテンシャルはかなり高い地域だ。知られざる源泉があるかもしれない。

上毛高原駅からのバスは1時間に一本。他にも登山ウェアの乗客が1人いたが、猿ヶ京のバス停で降りたのは自分1人だけだった。

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猿ヶ京は赤谷湖というダム湖の湖畔にある 昔カッパが生息していたらしい。

湖に流れこむ赤谷川を辿って歩くと、10分ほどですぐにオートキャンプ場に行き着いた。川が浅くなったので、ここから探索を開始する。

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湯島オートキャンプ場 GWなのもあり、かなりの人だった

まずはキャンプ場の端っこに行くとコンクリートの隙間から川にドバドバと注ぎ込む流れが。冷たいのを覚悟して手を触れてみた。

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キャンプ場の脇で川に注ぎ込んでいた

…!!!!

あったかい!

あまりに虚を突かれパニクった。

探索を開始して2分、こんな劇的なことがあるだろうか。まさかキャンプ場の隅っこで温泉がドバドバ湧いているなんて。いくらなんでも幸先が良すぎるだろう。なんという僥倖・・・!

 

温度も触った感じ40℃近くある。いい湯加減だ。

 

あまりの出来事に興奮し、ハァハァ言いながら撮影していたのだが、一息ついて腰を上げて周りを見渡したところ、ある事に気がついた。

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赤い屋根の建物が気になる

この温泉が流れて来ている方向に建物がある。…これは、なんか嫌な予感がする。

「きっとキャンプ場の管理棟かなんかだろう」

そう自分を励ましながら恐る恐る近づいて建物の正面に回った。

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突きつけられる「ONSEN」の文字

「ONSEN」と建物に書いてある。

まさか…。

 

念のため、Googleで「ONSEN」と検索してみたがwikipediaの「Onsen」の項がヒットした。意味は「温泉」である。

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入浴時間と利用料金が書いてある

管理棟どころか、温泉棟だった。

そんなキャンプ場ある!?

 

人に尋ねるまでもなく、さっきのお湯はここから流れて来ているとみて間違いないだろい。

 

人知れず湧き出す野生の源泉を見つけたと喜んでいたら、気がつけば風呂から川にかけ流された排水に興奮していた。

金銀財宝を美女にもらって喜んでいたら、寝て起きたら全部葉っぱになっていてタヌキに化かされていた、という昔話の現代版である。

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発見した温泉(の排水)

確かにキャンプ場に温泉が湧いていたら普通、ほっておかないだろう。ここは温泉付きキャンプ場という最高の施設があることが分かっただけでよしとしよう。

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あとで調べたらものすごくちゃんとした浴場だった。キャンプ場利用者は入浴無料!

しかし、この発見は無駄ではない。源泉を探索するのに重要な情報が手に入った。

この温泉、完全に無色&無臭なのである。

 

ここの源泉が無色無臭なのだとしたら、周辺で湧いている源泉も無色無臭である可能性も高い。つまり、ここらで源泉を探す手掛かりは水温だけなのだ。

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活動の準備中に行った湯俣温泉 白や黒の変色もあるし強い硫黄臭もある

指針としては、川を辿っていき、川に流れこむ支流を見つけては温度を1つ1つ手で確かめていくことにする。温泉が湧いていれば川に流れ込んでいるはずだ。

 

いよいよキャンプ場の脇から川を遡っていくことにする。

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川を遡上しながら支流を探す

浅くて広い非常に歩きやすい川だが、いかんせん川の水が死ぬほど冷たい。なんせ前を向くと、川の上流方向にある谷川岳はまだ雪で覆われている。

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春とはいえまだ雪山の谷川岳

銭湯の水風呂レベルではなく、さらに氷を浮かべたくらい冷たい。1分も入っているともうかなりキツい。なるべく浅いところを選んで歩いていく。

流れこむ支流をみつけては温度を確かめるために手を入れる、を繰り返す。

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こういう川に注ぎ込む滝や支流の温度を確認していく

支流に手を入れ歩くという謎の作業を3,40分続けると徐々に川の周りが深い谷状になり、目の前には渓谷が現れた。

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名もなき美しい峡谷

急に水深が深くなっているため、流れも穏やかになっており静寂を感じる雰囲気だ。岩肌の荒々しさとあいまって非常に美しい。ここに来るまでも深い谷状の川底となっていたので、キャンプ場から冷たい川の中を歩いていかないとたどり着けない場所、ということもあり発見感に胸が高まった。

RPGだったらレア装備くらい落ちていてもいいロケーションだ。

 

少なくとも胸くらいまで水深があるのでこのまま川の中を進むことはできない。少し戻って川から上がり、さらに上流へと進んでみたが、そこでは別の秘湯温泉旅館がひっそりと営業していた。

 

このエリアでは新しい源泉を見つけることは出来なかったが、これはこれで面白い出会いだった。今回はさらに、ここから数km離れたポイントに移動し、再び探索を続けることにする。

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猿ヶ京から南下し須川川という川へ

ここまで成果はなく温泉の排水しか見つかっていないが、足取りは軽い。なぜかというと、こちらのポイントにはある有力な情報があるからだ。

師匠の本にこう書いてある。

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「大影・秋鹿林道では32℃の温泉沢に出会うことができます」←!!

移動してきた探索地域(2つ上の画像の赤い場所)には四万温泉の方に抜ける林道が通っており、その途中で師匠は「温泉が流れる川」を見つけた、というのだ。川の脇で温泉が湧いているのではない「温泉が流れる川」だ。

マジかよ。

マルコ・ポーロに「東にジパングという、黄金の国があったぞ」と言われたイタリア人も同じような気持ちだっただろう。

 

しかも、その温泉沢の情報だが、ネットでいくら調べても一切情報が出てこないのだ。世の中には「野湯」という、温泉施設以外に沸いている温泉に入って楽しむジャンルがあるので発見済の温泉はたいてい共有されているのだが、本当に1件もヒットしない。

 

ガチで師匠は前人未到温泉を発見してしまっているのだろうか。

 

念のため「この場所へ行きます」と師匠に報告がてら事前に電話したのだが、「まぁ近づくと木々の様子が変わるからすぐ分かるよ」とのことだった。

 

木々の様子が変わる!?

そんなこと言われても、今までそんな「温泉湧いてそう」みたいな景色に出会ったことはない。そんな温泉探知能力、僕にあるだろうか。手がかりはほぼないが、師匠に次ぐ史上2人目の入浴かもしれない「温泉沢」を探しに山へ入る。

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この林道、検索するとオフロード好きの方のブログがよく出てくる。舗装されていないが、登山道ではなく車が通れるので、たまにオフロード車が駆け抜けていく。

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2時間に1台くらい車が通る

道は歩きやすいが肝心の川はかなり険しく、川の中を歩き続けることはとてもできないので、道を進んでは下のほうに流れる川を目掛けて斜面をズザーと降り、川の温度や支流をチェックすることになる。

これは体力的にかなりきつい。

それでもかなり細かく川を確かめていったのだが、サーモ画像的に怪しいエリアに来ても全く木々の様子に変化は見られない。やはり「木々の様子が変わる」とは探索のプロ目線だったのだろうか。

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気持ちのいい道だけども…

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川の水はもう、ずっと冷たい

もう結論を言うと、残念ながら温泉が流れる川を見つけることはできなかった。

完全に温泉の流れる川に入る気でいたので肩を落としてトボトボと山を降りたのだが、そこでたまたま、ある場所に目が引かれた。

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周囲の川とは様子が違う!

ここだけ、完全に川の色が違う!

森の様子は普通だし川の一部でしかないが、川の様子は明らかに違う。これは完全に何かあるだろう。温泉成分でしょう!恐る恐る手を入れてみる。

 

あれ、普通にめちゃ冷たい。

 

この流れ、完全に暖かいだろうと思って手を入れたので落胆した。そもそも、その色の違う先の方を辿っても、湧き出してきているような流れは一切ない。

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明らかに周囲と違うんだけど、謎。

史上2番風呂(?)は夢と終わった。

でも、まだまだ今回は探索初日。この数日後、次の探索に出かけることになるのだが、ちょっとすごいことが起こってしまった。次回の探索は「草津」!

 

↓今回のダイジェスト


温泉探索@群馬・猿ヶ京