前人未到温泉

秘湯どころじゃない、人類未発見の温泉(源泉)を探して”史上一番風呂”に入ります。

【須巻温泉】忘れられた塩原温泉郷”十二番目の幻湯”【野湯】

塩原 野湯 源泉 須巻温泉

前人未到温泉の活動写真を撮ってみた。

まずは完全に余談なのだが、この夏、ひょんなことから家族で写真を撮ることになった。思うように出かけられないので「近場で何かやるか」ということで、近所のフォトスタジオでプロに撮ってもらうことに。そういうことなら、と思い立って、家族写真の合間にこの「前人未到温泉」の活動写真を撮ってもらった。芸能人の宣材写真的なやつ、なんかちょっと憧れるではないか。

前人未到温泉 宣材写真

出来た写真がこれである

愛用のザックを背負いケロリン桶+組み立て式スコップ+ガスマスク、と源泉探索に使用しているグッズを盛り込んだ。温泉に入りに行こうとしている人には全く見えない、活動内容をよく表している仕上がりになった。

そして、プロに自分の写真を撮影されて分かったことがある。よくこういうスチール撮影の現場ではモデルさんがカメラマンに「いいね、いいね!すごく可愛いよ!最高!」と声を掛けられながら撮影されているイメージがあるだろう。あれ、被写体が僕のようなおっさんにもあるのだ。「え、モデルとかやってたんですか?笑顔が良すぎる!」「めちゃくちゃいいっすねその顔!」「冗談抜きで今年一番の写真が撮れました!」とベタ褒めされながら撮影された。思わず「いや、カメラマンさんどうせそれ全員に言ってるんでしょ!」と褒め言葉に満更でもないグラドルのような返しをしてしまった。さすがプロ。

前人未到温泉 宣材写真

カメラマンが撮っている被写体はこれである。

ましてや僕がどんな活動をしていてこんな写真を撮ってもらっているのか一切説明はしていないのだ。家族写真を撮っていた客がいきなりこの姿に着替えて来て頭の中は「????」だったと思うが、臆面にも出さなかった。

だた、この写真を撮った直後、「フリースタイルノートブック」の活動が思わぬ注目を浴びててしまった。「もしも新しい温泉が見つかったらこの写真を新聞に使ってもらおう」とか幻想を抱いている場合じゃなかった。フリースタイルノートブックの活動写真こそ必要だった。

www.j-cast.com

フリースタイルノートブック 活動写真 宣材写真

フリースタイルノートブックを開発した中学時代の僕に「お前これでニュースに載るぞ」と伝えてやりたい。

さて、いよいよ今シーズン初の「前人未到温泉」活動である。向かったのは栃木県・塩原。これまで野湯の「甘湯源泉」や「甘湯新湯」への探訪、「塩の湯」の川岸露天風呂入浴、そして「富士登山」と過去2度訪れており、これでこの活動3度目の訪問となる。実に温泉の探し甲斐のある地域である。

tori-kara.hatenablog.com

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 今回はコロナ自粛期間中に人工衛星画像を凝視して見つけた塩原の「源泉が湧いてそうなポイント」の探索と「須巻温泉」という幻の源泉を利用した野湯に入浴するために現地へと向かった。

塩原温泉郷、 忘れられた12ヶ所目の温泉「須巻温泉」へ

8月の中旬、猛暑の東京に比べると涼しい塩原温泉郷へとバスで降り立った。向かっている須巻温泉はこれまでに行った源泉とは違い、塩原温泉の市街地から程近い場所にある。これまでに訪れた「塩の湯」「新湯」といった温泉を含め、塩原温泉郷には十一の代表的な温泉地があり『塩原十一湯』と呼ばれている。

塩原十一湯

塩原十一湯

三大天、四天王、五老星、六祈将軍、七英雄…と「その世界で特別視されているすごいやつら」的な呼称にはいつもワクワクさせられる。ただ塩原のように数字が「11」となると、もし擬人化したとしてもさすがに多すぎてキャラづけが大変だろうな。そう思って現地を歩いていたらこれを見つけた。

塩原八弥 温泉むすめ

擬人化されとる!

塩原温泉の擬人化「塩原八弥(しおばら やや)」

塩原八弥 | 温泉むすめ公式サイト

擬人化あんの!?いや正確には「塩原十一湯」それぞれの擬人化ではなく、塩原温泉自体の擬人化のようだ。紹介文をよく読むと「11のアイドル秘密道具を持ち歩いているらしい」と塩原十一湯がキャラ設定に組み込まれていた。

鉄道で展開されている「鉄道むすめ」は知っていたが温泉もあるとは。温泉街にはそんなに行かないので気づいていなかったが「温泉むすめ」は2016年からあり、日本各地と台湾の温泉地121カ所(2020/4/10現在)が擬人化されている。「11人もキャラづけするの大変だろうな」なんて思っていたが、日本の擬人化に対する熱量はそんなレベルではなかった。

結構、豪華な声優陣である

さあそして今回訪れる「須巻温泉」だが、先ほどの源泉マップを見てもらえると分かるが「塩原十一湯」には入ってない。そう、塩原十一湯というのは塩原にある全ての温泉を指し示しているわけではない。実際これまでに入浴した野湯「甘湯」や「甘湯新湯」は塩原にある源泉だが十一湯には入っていない。ただ、須巻温泉がそれらの源泉と違うのは元・塩原十一湯だということだ。

塩原十一湯 甘湯 須巻

甘湯や須巻はこの位置にある

かつて塩原十一湯は今とは違う顔ぶれで、おそらく1995年ごろ?に今のメンバー構成になった。おそらく湧出量や湯温の変化、そして宿泊施設の盛衰によって脱退や加入があるものなのだろう。しかし「元・塩原十一湯」という肩書きにはそそるものがある。擬人化するなら白髪混じりの渋みのある壮年男性で今は隠居中。周囲には気づかれていないが現役の十一湯をしのぐ実力を持つ。(CV:大塚明夫)  …ということでどうだろうか。

そんな男のもとにある日、訪問者が…。訪問者とはつまり私だ。物語が動き始めるには十分な展開ではないか。さあ膨らむ妄想はここまでにして、そろそろバス停から歩き出そう。

箒川

塩原温泉郷はこの箒川沿いに源泉が点在している

時は8月中旬。酷暑エグかった東京よりは断然低い気温ではあるが歩き出すと汗が吹き出る。これを書いている9月はすっかり涼しくなっているため、はるか昔のことのようだ。

須巻温泉は江戸時代に発見され明治〜昭和期にかけて根本屋や須巻旅館といった旅館があったが今や無くなり、源泉だけが残っている。昔は管理されていたが人の手を離れ再び野生に戻ってしまったタイプの野湯である。完全な野生タイプの野湯も素晴らしいが、こういう再野生化タイプの野湯は別の趣があって面白い。「温泉浴場」が徐々に「手付かずの自然」に戻っていく過程の1シーンがそこには切り取られている。廃墟鑑賞と同じで人類滅亡後の世界を想像させられる部分もある。須巻温泉、今の姿はどうなっているのか。

須巻温泉 旅館

書籍「塩原温泉ストーリー」より須巻旅館の写真 木造3階建の非常に立派な旅館だ

須巻エリアの入り口に差し掛かった時には数軒あった民家もすぐに無くなり人の気配も消えた。建物が無いわけではないが人気がなく、雰囲気から感じとるに温泉付き別荘地なのだろう。そしてその別荘地としての利用も今はほとんどされていない「元・別荘地」といった趣。エリアのどこに目的の野湯があるのかは分からないので探索していたのだが早速、温泉の気配を見つけた。 

塩原 須巻温泉

これまでに行った塩原の野湯でも見た黄土色の温泉成分!

右側の温泉成分に目が止まり観察していたのだが、写真の左側の壁面にぽっかりと穴が開いているのに気がついた。蜘蛛の巣にかかりながらも覗き込むと… 

須巻温泉 鍾乳洞 塩原

まさかのミニ鍾乳洞!

拳が1つ入るかという隙間に上からポタポタと水が滴り下には温泉成分が堆積し、そして中には数本の小指ほどの細さの鍾乳石が立っている。手のひらサイズのミニチュア鍾乳洞である。すごくかっこいい!塩原には源三窟という鍾乳洞もあるしこれまでの源泉探索でも温泉が湧き出る鍾乳石のような構造物も見つけていた。石灰成分と温泉が結びつくと複雑な造形を産むようだ。

昨年、川で見つけた温泉が湧き出る鍾乳石

ザトウムシ クモ

手のひら鍾乳洞の側にはザトウムシ。こっちもすごい造形

さすがは元・十一湯。目的の野湯ではないようだが、エリア内のいろんなところで源泉が湧いているようだ。

須巻温泉 塩原 野湯

須巻エリア内は緑に包まれている
さらに奥に進むとこんな小屋が現れた。

須巻温泉 小屋

謎の三角小屋

須巻温泉 塩原 源泉

小屋の中からはトクトクと源泉が湧いていた

元々ここにあった温泉付き別荘地で使われていたmy源泉だろうか。湯温は高くないが沸かせば毎日温泉入り放題である。塩原温泉市街も近いし至る所で温泉も湧いている。別荘地としてすごい魅力的だと思うがなぜこんなに寂れてしまっているのだろうか。

須巻温泉 塩原 源泉

小屋の近くからはもっとドバドバと温泉が湧いていた。須巻すごいぞ!

須巻温泉 塩原 源泉 小屋

須巻内にはこの「源泉小屋」がいくつもある

温泉はガンガン湧いているのだか、ここにも湯船はなかった。というか、いたる所に源泉が湧いているだけにどこが目的の野湯なのか分からない。もっと適した入浴場所があるはず、と信じて探索を続けるがいいところが見つからなかったらそこらへんの湧出ポイントで無理やり入って帰ろうかな。そう思い、奥を探索していると気配を感じた。

塩原 須巻温泉 シカ

あれは…?

塩原 須巻温泉 シカ

鹿!

塩の湯に行った際はカモシカに遭遇したが、今回はシカ!一心不乱に草を食べているので近くで撮影できるかと思ったが40mくらいまで近づいたら光の速さで森に消えていき、あたりに鳴き声が響いた。仲間の鹿に侵入者を知らせているようだ。

そして、さらに探索していると今後はリスを発見した。

リス!

かつて温泉宿があったこの場所は野生生物の楽園へと戻りつつあるようだ。さらに…

塩原 須巻温泉

自撮りをしながら歩いていたらカメラに何かが写り込んだ

gopro トンボ 塩原 須巻温泉

goproにトンボ!人間はいないが生き物には溢れたエリアだ

そんな生き物だらけのエリアをぐるっと回って探していると目の前に突然、しっかりとした湯船が現れた。

須巻温泉 塩原 野湯

これが探していた湯船に違いない!

塩原 須巻温泉 野湯 湯船

しっかりとした湯船が2つ作られている

野湯というか、打ち捨てられた露天風呂す?温泉がパイプで引かれ湯船として湯がためられている。湯船は2つに別れていて、源泉が直接注ぎ込まれている奥の湯船は沈殿物が黄色くて手前の湯船は黒い。同じ源泉なのに湯船の色が違う不思議な現象だ。

須巻温泉 塩原 野湯 源泉

さて湯温は…?

須巻温泉 湯温 源泉

人肌。ゆるめだが夏場の長湯にはいいかも

野湯としては温度は悪くない。源泉が流れ込んでいるこの黄色い湯船よりも手前の黒い湯船の方が温度が低いはずで、そちらの湯加減を確認しようとしたのだが…。

須巻温泉 

え…?何か中で動いてる??

須巻 オタマジャクシ

オタマジャクシ…!!

嘘だろ。まさかのオタマジャクシが生息する温泉。

後日「オタマジャクシ 温泉」で調べたところ、鹿児島のトカラ列島には46℃の高温の温泉に住むオタマジャクシがいるようだし、新たな温泉オタマジャクシを発見してしまった可能性もわずかながらあるが、おそらく違うだろう。たぶん普通のオタマジャクシだ。というのもこっちの手前の湯船はめちゃくちゃぬるい。こいつが特殊な環境に住む温泉オタマジャクシなのではなく、この温泉の環境が「ほぼ池」なのだろう。 

須巻 野湯 オタマジャクシ

よく観察するとオタマはは1匹や2匹ではなく10匹以上いる。

透明だし黒い枯れ葉や泥が堆積していてオタマジャクシが住んでいる。これは温泉と言えるだろうか。いや、池だ。どんなに浅かろうが、湯温が低かろうが、温泉なのであれば入る!それが野湯愛好家スピリッツだと思うが、これは池。判定、池です。源泉は同じことだし黄色い方の湯船に入るとしよう。

須巻温泉 野湯

判定、出ました。

オタマジャクシのいない黄色の湯船に入るのはいいが、こっちはこっちで色々沈殿している。そしてこの黄色い沈殿物、見覚えがある。

塩原 須巻温泉 沈殿物

黄色いモクモクした沈殿物は過去にも塩原で見たことがある

甘湯新湯 塩原

そう、あの甘湯新湯の沈殿物を思い起こさせる

甘湯新湯のようなビビッドな発色ではないものの、あの源泉と場所が近いこともあって似たビジュアルだ。甘湯新湯では沈殿物を思いっきりバシャバシャかき出してから入浴したが、須巻の場合はこれだけしっかりとした湯船だしさすがに気が引ける。マナー的に。誰にも使われていないのかもしれないが可能な限り環境を変えずそのままにしておきたい。今回はそのまま入浴することにしよう。

須巻温泉 塩原 野湯

でもなかなか、

須巻温泉 塩原 野湯

踏ん切りがつかない。こっちもほぼ池だし。

そこで入浴前にこの須巻温泉のありがたみを深めるために知っておくべき非常に興味深い逸話を記しておこう。大正元年に夏目漱石がこの須巻温泉を訪れたそうで「漱石日記」にこう書かれている。

『龍化の滝の帰途、須巻の滝に行。三本の湯瀧。カブト被る。』

「龍化の滝」とは塩原にある観光名所の滝だが、その後の「須巻の滝」「三本の湯滝」とは何か。そして「カブト被る」とは?その正体がこちらである。

極楽めぐり : 漫画漫文

「極楽めぐり : 漫画漫文」著者 近藤浩一(国立国会図書館デジタルコレクションより)

極楽めぐり : 漫画漫文 - 国立国会図書館デジタルコレクション

左の挿絵を見てほしい。

これは漱石が訪れたのと同時期、大正時代に書かれた本の挿絵で「須巻の滝」「三本の湯滝」とは温泉旅館・根本屋のこの温泉浴場のこと。今でいう”打たせ湯”である。そして入浴している人々が被っているのはトタンで作られた兜。しかし兜と言えば聞こえはいいが、実際は「兜様のへんてこな物」「バケツに穴をあけ逆さに被ると思えば大した間違いはない」とこの本にも書かれており当時から『何だよこれww』という扱いだったことが分かる。何のためにこれを被るかというと「飛沫よけ」とのことだ。そのまま湯に打たれると隣からの水しぶきが飛んできて痛いからだろうか。現代の飛沫よけであるフェイスシールドとは真逆で顔の部分だけが開いたこのヘンテコな兜は湯を浴びると「ガンガンバラバラ素敵に(注:「とても」の意)やかましい」という。そりゃそうだ。

塩原を訪れた頃の夏目漱石(国会図書館デジタルコレクション)

夏目漱石 | 近代日本人の肖像

何が最高って、これを夏目漱石が体験したというのだ。自分が入浴している時に髭を蓄えた文豪・漱石先生がバケツ被って入ってきたら…と想像するとめちゃくちゃ面白い。その瞬間を見れた当時の方が羨ましい。さらに漱石はそこに居合わせた人にこう注意されたと書いている「胸を湯滝に打たせていたら死んだ人がいるから、胸を打たせるのはやめておいた方がいい」と。面白い湯だと思ったら急な命の危険。何とも笑いと死が近いところに同居している温泉である。それにしても漱石の打たれた湯滝、入ってみたかった。

ちなみに夏目漱石が須巻温泉を訪れたのは8月21日。僕がここを訪れたのが8月14日なのでほぼ同じ環境で漱石先生が堪能した須巻の湯に浸かることができる。楽しみになってきた!さて、そろそろ入浴しよう。

須巻温泉 塩原 野湯

入ります!

覚悟を決めて一歩足を湯船に踏み入れるとズブズブズブ…と脚が沈み込んだ。水面下20cmくらいのところに沈殿物が溜まっていてそこが底のように見えていたが、実はそこからさらに40cmくらい下に湯船の底があり意外に深い。つまり40cm分、だいたい膝下まで堆積物が積み重なっている。温泉成分も当然あるのだろうが、脚が触れている感触は泥と枯れ葉と枯れ木である。これはヤバイ。

須巻温泉 塩原 野湯 

脚を入れただけで分かるヤバさ

最悪の感触だが意を決して腰を下ろすと体が泥の中に沈み包まれた。重複になるが、最悪の感触である。例えるならば「温かい沼」。湯加減自体は悪くないが、長湯するには強い精神力が必要である。心地悪さが心地よさを上回っている。こんな野湯は初めてだ。

須巻温泉 塩原 野湯

表情が物語る入り心地

須巻温泉 塩原 野湯

入浴して沈殿物が巻き上げられた結果、湯船は両方同じ色になった

このまま入り続けていいのか不安になる脚のむずむず具合。これに入れるなら今後どんな野湯にも入れるのではないかという自信さえ湧いてくる湯である。

須巻温泉 塩原 野湯

足を上げてみたらこうなっていた。

ただフォローしておきたい。きっちり掃除をして底をさらってから入ればきっと快適なのだ。あまりにきちんとした湯船なので現状維持のため、そのまま入ってしまったが…。この湯船は少し高台にあるので正面も視界が開けていて、湯船から見える景色はとても気持ちが良い。

須巻温泉 塩原 野湯

湯船から見上げた景色 紅葉も凄そう!

須巻温泉 塩原 野湯

めちゃくちゃ美しい場所ではあるのだが!

須巻温泉 塩原 野湯

湯から出たらこうなっていた。黒い!

体についた泥を源泉で洗い流し、今回の目的である夏目漱石も入った須巻温泉の入浴は終了。さて次は新しい温泉を探す源泉探索活動に移ろう。

塩原 幸楽寿司

昼食は塩原温泉にある幸楽寿司さんで。塩原での温泉探索に関する投稿をしていたらインスタでメッセージを頂いた

塩原 幸楽寿司

今回の記事で参考にした須巻温泉の歴史が書かれている「塩原温泉ストーリー」という本は幸楽寿司さんに教えてもらったのだ

広末涼子 ポスター キリンラガー

貼ってあったキリンラガーのヒロスエ。当時は20歳で早稲田の大学生。キラキラ感がすごい!

さあ、実はそもそも今回塩原に来たのはめちゃくちゃ怪しい場所を衛星画像で見つけたからなのだ。前回の記事で書いたが、春から初夏にかけての自粛期間中、出掛けられないので衛星画像を見つめてリモート温泉探しをがっつりやっていたのだが、非常に怪しい場所を各地に見つけた。

tori-kara.hatenablog.com

 そのうち那須のポイントには(未発見ではないものの)本当に源泉があった。ネット上には場所の情報はない源泉である。新しい温泉発見の期待が俄然高まってきた。向かう塩原のポイントには何があるのだろうか。

塩原 サーモ 人工衛星画像

塩原の「新湯」「元湯」という温泉地並に反応があるエリアがある!

このエリアには地形図や登山地図を見ても源泉があるという情報はもちろんないのだ。ワクワクするぜ。

着いたのは塩原十一湯のひとつで、平安時代に発見された塩原で最も歴史ある温泉地「元湯温泉」。何より非常に山あいにある。山中にまだ見ぬ源泉があってもおかしくない。 

元湯温泉 塩原

山奥に温泉宿がたった3軒だけの秘湯温泉地「元湯温泉」

元湯温泉 塩原

川にはにごり湯が流れ込んでいた

元湯温泉から道路沿いを進んで例のポイントを目指した。塩原温泉市街地よりさらに標高を上げたことでさらに少し涼しくはなってきたが真夏の山歩きは堪える。

塩原 森

ハイドレーションで水をこまめに飲んで進む

 エリアに入って見て分かったのだが、不思議な雰囲気だ。いつも歩いている山とは違い起伏が無くかなり平坦だし、下草もほとんどなくとても開けている。ヨーロッパの森みたいな風情である(行ったことないけど)。日本の山にはほとんどこういう場所がないので非常に新鮮な空間である。

いつもの山

いつも歩いている山はこんなのだが

塩原 湿地 林

このエリアの小綺麗さは何だろう

さすがに人の手が入っていると考えるのが妥当だろう。しかし林業を行っているような雰囲気もないし、観光に使われている様子も一切ない不思議な森である。この森のどこかに温泉が湧いているのだろうか。くまなく歩いて探していると池が現れた。もしかして…?

塩原 森 池

結構広い池が森の中に現れた

一応確かめてみたが別に暖かくはない。これが温泉というわけではないのだろうか。ただそこそこ広いとはいえ、この池に流入する川もなければ、この池から流れ出す川の流れもない。ただ水が溜まっている。

森の様子をgoogleアースで見ると自然林というより植林されているように見える

ここに池があるのはGoogleアースで事前に確認していたので分かったいたが、よく見るとこのあたりの林は植林されたようにまだらになっているのが分かる。 さらにこのエリア、地形図を見るとこう表示されていた。

塩原 湿地

池もあるし湿地もある

地形図にはやはり川は表示ないのだが、一方でさっきの池も表示されていないのだ。逆にこの先には湿地があると表示されている。向かってみると…

塩原 湿原

確かに湿原らしき場所があった

塩原 湿地

さらに、くっきりしたけもの道を辿って行くと…

塩原 湿地

動物の水場らしき場所もあった

地上を流れる川がないにも関わらず池や湿地があるということはやはり、このあたりに湧水箇所がありそれが水源になっているのだろうか。衛星画像に熱源の反応もあることから考えると、ただの湧水ではなくて低音の温泉の可能性もある。もしかすると、あの池の湖底に温泉が湧いているのだろうか。

塩原 林

源泉は発見できず!

これまでの経験上、源泉のある条件がかなり揃っていたので本当に未発見の源泉を見つけてしまう可能性があると踏んでドキドキしていたのだが発見には至らなかった。しかし、である。ここと同じくらい怪しい場所はすでに目星をつけているだけでまだまだある。そのうちのどれかで源泉が湧いていることを期待して活動を続けていく。
次回は那須・茶臼岳の山奥に湧く野湯「御宝前の湯」に向かいます!

【今回のダイジェスト】


【野湯】塩原温泉の忘れられた十二番目の温泉「須巻温泉」