前人未到温泉

秘湯どころじゃない、人類未発見の温泉(源泉)を探して”史上一番風呂”に入ります。

【渾身調査500時間】街のいらすとや使用例1000個集めたら『いらすとや』のヤバさが分かった。

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前人未到の「街中で使われている"いらすとや"使用例」1000個収集&地図上へのマッピング。自分で言うのは適切ではないが、あえて言わせてほしい。

偉業である。

↑アイコンクリックで写真と説明が見れます。↑

2018年12月に活動を開始してから3年と数ヶ月。街でいらすとやを探して写真を撮り、何の素材か特定してマップに登録する。その作業にかかった時間は500時間超。外出先でたまたま見かけたものを集めているだけではない。定期的にいらすとやを探すためだけに出かけているのだ。ほぼ、いらすとや専用の「500時間」である。僕には家族がいるのでこう伺いを立てることになる。

僕「明日(土曜日)いらすとや探してきていい?」

妻「いいよ」

なんと理解のある家族だろうか。感謝である。

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1000個集めないと見えてこないものが…ある!

徹底的なフィールドワークを通して作成した僕なりの『いらすとやファンアート』。そこから見えてきた、1000個集めた者にしか知ることのできない”調査結果”をここで共有しよう。

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アイコンをクリックすると実際の使用例の写真が見れます。

ちなみに2020年の500個登録時にもまとめを書いている(下記リンク)。その時から変化した情報もあるのでそれも踏まえた上で伝えていきたい。

tori-kara.hatenablog.com

【はじめに 〜なぜいらすとやを集めるのか〜】

私見だが、いらすとやをたびたび見かけるようになってきたのは2015年ごろだった。インターネットの世界でまず「この素材、もうあるのかよww」という実用性と「このイラストいつ使うんだよwww」という遊び心にみんなが心を掴まれ始めた。

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話題になった事柄がすぐにアップされるフットワークの軽さがいらすとやの特徴。
余談だが2015年アップの「爆買い」はその後、商店街の旗に使われていた。

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「いつ使うんだよ」と思う素材も実際に現実で使われてたりする。その先見性よ

そして2016年にはもう、その圧倒的な素材量によりいらすとやはネットの中から現実世界へと活躍の範囲を広げ始めていた。当時はまだ街中での使用例は珍しく、見かけた人に「(あのネットで有名な)いらすとや、ここで使われてるんですけどw」と面白がられていたのだ。わざわざ写真に撮ってその画像がツイートされていた。そこから世間へのいらすとや普及度は加速度的に上がっていった。この段階で思ったのは『これはインフラになる』ということだ。今の若い世代が「携帯電話が無かった頃ってどうやって友達と待ち合わせしてたの?」というのが想像できないように「いらすとやが出来る前はこういう"ちょっとしたイラスト"が欲しい時どうしてたの?」となる日が来るように思えた(もしかして、すでに来ている?)。あのね、みんなWord2003とかに入ってる死ぬほどイけてないクリップアートを心を無にして使ってたんだよ。

 

いらすとやの急速な普及を目撃したことで、その過程を観測するとともに、どれだけ我々がいらすとやに囲まれて生活しているのか可視化してみようと思ったのだ。それがいらすとやマッピング活動を始めたきっかけである。

【いらすとやマッピングのルール】

・登録するのは街中にある[恒常的に]存在しているいらすとや使用例

 OK…看板、各種張り紙、ずっとある系のPOP

 NG…チラシ、書籍、地域の掲示板、コロナ関連

→すぐ無くなってしまうとマッピングの意味合いが薄れるので「掲示期間が限定されていないもの」に限っている。季節ものの飾り(クリスマス・花見等)やこの先消えていくであろうコロナ関連などは基本的には登録していない(例外あり)。ただこれらの場合であっても「この店は他の時期にも確実にいらすとやをPOPに使用しているな」と断言できる場合は登録している。すごいたくさん使ってるとか。

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池袋ジュンク堂にて。いらすとやが表紙の書籍というのも世にいくつかある。

www.amazon.co.jp

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コロナ禍によってマスク・消毒関連で一気に世の中のいらすとや量が増えた。
しかし(一時的なものだと願って)マップには登録していない。

・ミウラ自身が撮影したもの、もしくは撮影者から直接提供を受けたもの

→95%はミウラ撮影分だが、知人やSNS上で頂いたものもあります。ありがとうございます。今や海外での使用例もネット上には見かけますが旅行先で見つけた方は是非!

応募先→torikara0418@gmail.com

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沖縄の方からSNSで頂いたもの。「いらすとや横断幕」というのが沖縄らしい

【いらすとや使用例1000個集めて分かったこと】

それでは研究成果をお伝えしていこう。

調査結果①最もいらすとや需要が高いのは不動産業界

いらすとや使用例1000個を使われていた場所で振り分けると以下のようになる。

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飲食店には意外に少ない

最も使用例が多かったのは不動産業界だ。いらすとや使用例500個登録時の集計でも1位だったがそれ以降もトップシェアを守り抜いた。街中で最もいらすとやを必要としている業態と言えるだろう。しかしその不動産業界でも1000例中85個、シェアは8.5%に過ぎない。いかに幅広い場所・用途でいらすとやが使われているかも思い知らされる。

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あなたの住む街の不動産屋さんもあるはず

そしてこれは登録500個の際のまとめでも紹介したことだが、不動産業界は使用例が多いだけに極端な例も存在する。それが”いらすとや密度No.1不動産”の称号を持つ「人形町不動産」だ。

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超高濃度ないらすとや物件紹介

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「駅前店」から歩いて20秒ほどで「人形町店」もあり、そっちもすごい

その数もさることながら、使用素材のバリエーションもすごい。そしてただ紙をプリントアウトしただけではなく、風雨に耐えられるようにラミネート的な加工までしてある。かなり手間と時間がかかっている気合の入った事例である。この人形町不動産を見つけたのは2019年・登録380号の時点だったが、その後もこれを超えるいらすとや使いの事例は出てきていない。不動の王者である。一方でこの時は冬だったのでクリスマス感のある飾りだったが、他の時期がどうなっているのか気になって1年半後の2021年に再度訪れてみると…。

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いろんな色のアジサイ素材とカエルで梅雨ver.になっていた

鬼のいらすとや使いは健在で、そしてやはり6月に合わせて梅雨ver.な飾りつけになっていた。クリスマスver.もそうだが、梅雨ver.もシーズン的に数ヶ月持つ飾りテーマではない。春夏秋冬の4回だけじゃなくもっと細かい頻度で変えているのだろうか。恐ろしい執念である。今後も定期観測していきたい。

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2022年1月はカラフルな「星」テーマの飾りに。
毎年シーズンごとに決まった飾りを使いまわしているわけでもなさそうだ。

話をランキングに戻そう。

ランキングで1位になった「不動産系」と3位「整体系」でいらすとや需要が高いのはそれぞれに根付いている特殊なPOP文化が背景にある。それは『店頭物件POP』『立て看板POP』だ。

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不動産屋さんには道路から見える位置に物件POPが貼ってある。
ここへのいらすとや登場率が非常に高いのだ。

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整骨・整体系の業界には「立て看板」という文化が強く。ここでのいらすとや率が高い。
ここでは痛みが消えたイメージとして「禁煙成功」の素材を使用

もしあなたが街中で効率的にいらすとやを見つける必要があるとき、真っ先に探すべきは「不動産屋の物件情報」と「整体・整骨院の立て看板」だ。覚えていて欲しい。

一方、2位「公園」にいらすとやが多いのはこの需要に尽きる。

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多種多様なお願いごと

「犬のフンは持ち帰って」「ゴミを捨てないで」「ここに入らないで」などなど。公園は様々なことを利用者にお願いしないとならない。上記はほんの一例で、お願いごとは無限にあるのだ。ただ、文字だけのお願いだとどうしても硬くなる。お願いごとに人の心が通わないのだ。そこで『全てを柔らかくさせる』という効果のある、いらすとやの出番がやってくる。

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元からある公園の「お願いごと看板」にいらすとやを追加した例。
やはり『柔らかさが足りないよな』という意見があったのだろうか。

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"後付け感"が目を引く看板である

上記はその”いらすとや効果”の分かりやすい例である。1990年代な雰囲気のある無骨な犬の散歩マナー系お願いごと看板に、文字通り取ってつけたいらすとやが後付けされている。マナーを守らない利用者がいることに業を煮やした担当者が藁をもすがる思い出付け加えたのだろうか。渋い見た目の看板に一握りの柔らかさが感じられる。

さらに、いらすとやの「柔らかさ」に全てを懸けた使用例もある。

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まさかの「文字なし・いらすとや単体使用」

お願いごとがあるようだが何も言わず、ただいらすとやを貼っている。文字を使わずいらすとや素材を単体使用することで極限まで柔らかくお願いする、という高等テクニックである。担当者がいらすとや上級者なのか、単にものぐさなのかは分からないが、言葉がないからといって効果が薄れることもなく、言わんとしてることを誰もが理解できる。凄いいらすとや使用例である。

 

そしてこの「お願い需要」は次の調査においても重要なキーワードとなる。

調査結果②最も街で使われているいらすとや素材の系統は「お辞儀シリーズ」

いらすとやには同じようなイラストでも多種多様なバージョンが取り揃えられている、という特徴がある。例えばこの「どうぞこちらへシリーズ」。

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このラインナップこそが「いらすとや」

まあ各シリーズ名はミウラが研究する過程で勝手に呼んでいるだけなのだが、いらすとや内にはこういう「シリーズ系素材」がたくさん存在している。1個でもいいのに色々なパターンを作っちゃうのがいらすとやだ。その中でどのシリーズが一番使われているのか、調べた結果がこちら。

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シリーズ素材は「お辞儀」「禁止マーク」の2強。

1位「お辞儀シリーズ」、2位「禁止マークシリーズ」そして「それ以外」と言ってもいい構図。ダントツ1位の「お辞儀シリーズ」というのはこういうことだ。

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とにかく頭を下げる人々や動物

そうこの「お辞儀シリーズ」は公園でのいらすとや使用例頻出のキーワードだった「お願い需要」に通じるものがある。公園に止まらず世の中全体で利用者へのお願い書き・注意書きが必要で、そこに添える”柔らかさ”としていらすとやが登場する、それが街中にいらすとやがあふれる構図の1つなのだ。

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いろんな場所でお店の人の代わりにいらすとやが頭を下げてくれている

2位「禁止マークシリーズ」と3位「入らないでシリーズ」も本質には変わらない。どちらも『ここで◯◯しないで』という”お願い”なのだ。お願いがある所にいらすとやあり。

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現在、世の中の禁止マークがすごい勢いでいらすとやに置き換わり中

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「立ち入り禁止」はいらすとやがあることでかなり柔らかくなる

それでは全く同一のイラストで一番使用例が多いものはどんな素材なのか。本当の意味での『いらすとや人気No.1イラスト』がこちらである。

調査結果③街中の人気No.1いらすとや素材は「監視カメラ」

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栄光の「いらすとやNo.1素材」は『監視カメラ・防犯カメラ』!

最も街中での使用例が多いのは「監視カメラ」だった。500個登録時の集計でも1位だったが、その後も2位以下との差を広げダントツでの1位獲得。確かに『監視カメラ作動中』を伝える場面においては文字よりもイラストのほうが効果的だろう。数ある愉快な素材の中で、いらすとや人気No.1素材がまさかの「監視カメラ」だというのは街中の使用例を数える『いらすとやマッピング』活動ならではの結果だと言える。

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あなたの周りの監視カメラのイラストも実はいらすとやかもしれない…

ちなみに2位「灰色の鳩」はほぼ全てが『ハトに餌をあげないで』での使用、「自転車事故」は『自転車走行マナー』を呼びかけるものだ。これらも”マナー遵守のお願い”と言えるだろう。そして注目すべきは1000例中の人気No.2の素材がたった5例ということだ。これは、これだけ散々探していても同じ素材を目にすることがほぼないという意味である。いらすとやのとんでもなく豊富な素材数を示す調査結果である。

調査結果④いらすとやは日本の空白を埋めている

ここまで「お願い需要」が街中にいらすとやが溢れる要因だということをお伝えしてきたが、他にも理由はある。人はどうしても空白を埋めたいのだ。

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張り紙の中にいるが何の情報も伝えていない、いらすとや。この使い方はなんだろうか。

この張り紙の目的はお店の営業時間を伝えることである。ここにサラリーマンのイラストは必要ないはずだ。「お願い」系と違って柔らかさを足す必要はないし、「禁止マーク」のように文字に添えることで伝えたいことの視認性がより高くなるわけでもない。かといって頭を下げる「お詫びシリーズ」でもない。謎の普通サラリーマン。彼は何をしにここに来たのだろうか。そう右下に余った半端なスキマを埋めるためにやってきたのである。こういう日本中の半端なスキマをいらすとやは埋めてくれている。例を挙げるとキリがないが、中にはこんな極端な例もある。

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工事現場の仮囲い。そしてその広大な空白を埋めるいらすとや

スキマ、埋めれてない。何とかしてこの広大な空白を埋めんとする使命感は感じるがサイズが小さすぎて全く埋めれてない。こんな近寄らないと分からないレベルのサイズなら貼る必要ないのだが、人の「スキマを埋めたい」という気持ちは止められないものである。

調査結果⑤この2年で街のいらすとや密度は倍になった

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探しに行けていないエリアはまだまだある。

ミウラの行動範囲の関係でマッピングはほぼ東京地区に限られているのだが、その中で分布は上画像のようになっている。実は世田谷区の駒沢公園の南にあたるエリアに「深沢 大空白地帯」と呼ばれる、いらすとやの存在しない地域があることは前回の報告でもお伝えした通りだ。皇居の二倍はあろうかという広大ないらすとや空白地帯である。いらすとやは基本的に駅前や商店街などの商業地域に多くあり、住宅地に少ない。そのため閑静な住宅街であるこのエリアには東京のど真ん中でありながら空白が生まれるのである。

あらためまして、この地域のみなさま投稿お待ちしております。

さらに、この活動の後半ではマップ上での分布だけでは分からない変化があった。それが表題になっている「街中のいらすとや密度が2倍になった」という事実である。どういうことかというと、活動を始めた2018年〜2019年には街を歩いていらすとやを1つ見つけるのにかかる時間は常に【30分】だった。もちろん街によって密度は違うが、1日にいくつかの街を探し歩くので1日で見ると均一化される。それが常に【1個当たり30分】なのだ。それが後半2021年〜2022年にはちょうど半分の【1個当たり15分】に短縮された。この数字の具体的な変化は数年にわたっていらすとやを探し歩いているミウラしか知り得ないものである。

しかも活動前半の探索範囲は都内でも特に栄えた山手線の内部がメインだったが現在は23区外を探すことだって多い。それなのに時間が短縮されているのだ。もっと言えば、この活動ではコロナ関連の使用例は登録していないのだが、この2年でコロナ関連のいらすとや使用例が街中で爆発的に増えた。正味な話、それを入れると密度の上昇は2倍では済まない。おそらく3倍〜4倍になっているはずだ。いらすとやマッピングは社会へのいらすとやの急激な浸透をまさに記録し続けているのだ。

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コロナ禍によっていらすとやはさらに爆発的に街中に増えた。
これもやはり「利用者へのお願い」需要である。

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ファミリーマートではいらすとやのファミマオリジナル素材を使用したコロナ対策ポスターが掲示された。全部登録するととんでもない量になる。

調査結果⑥ヨドバシからいらすとやが消えた?

「いらすとや濃度No.1」が人形町不動産な一方で、1店舗での「いらすとや使用数No.1」はヨドバシカメラである。もともとヨドバシでは同じくフリー素材で有名な『しみずけいた』さんのあの丸っこい人物イラストの印象が強かったが、店内イラストに急速なスピードで「いらすとや」が浸透し、お店の中がいらすとやだらけになっていた。これがこの活動の前半2018年〜2020年ごろの状況である。いらすとや使用例の収集家としては各店舗を巡ってはその様子を楽しく観察していたのだが…。

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2019年ごろのヨドバシはどの店舗もこんな具合だった

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もともとヨドバシは右の「しみずけいた」さんの素材(具満タン)がトレードマークだったのだが、一気にいらすとやへと転換が行われようとしていた。のだが…!

しかし、である。最近そんなヨドバシの様子がおかしいことに気がついているだろうか。2022年のヨドバシカメラを撮ってきたのでご覧いただこう。

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ん…?上のこれはいらすとやじゃないな。

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こっちは「しみずけいた」素材か…

あんなに溢れていたいらすとやが見当たらない。記憶を頼りに2年前にいらすとやがあったのと同じ場所に行っても、ない。あるのは「しみずけいた」素材(具満タン)や別のイラストである。これは何が起こったのか?その真相は分からないが、さらにヨドバシを回るとある傾向が見てとれた。

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まさかの第三勢力…!右写真の西口本店入り口で客を迎えるものこのキャラだ。

かつていらすとやが鎮座していたような場所がことごとく、この謎の素材に変わっている。もしかして、いらすとやが消えた理由はこいつのせいなのでは。いや、いらすとやを愛するがあまり「こいつ」なんて呼んでしまったが、よく見るとヨドバシの服を着てるし、いろんなパターンの素材がある。ということは、おそらくヨドバシ純正、つまりヨドバシが発注して自前で作ったオリジナル素材なのではないだろうか。これまで「しみずけんた」→「いらすとや」とフリー素材を駆使して歩んできたヨドバシカメラだが、ついにPOPに使うイラストを自前で作り始めたか。これが店内からいらすとやが消えた理由かは分からないし、いらすとやファンとしては少し寂しいが、そういう新しい第一歩なら応援したい。

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よく探すといらすとやもわずかに残っているようだ

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新宿西口本店の裏には「ヨドバシ自前」「しみずけいた」「いらすとや」の3者が鎬を削っていた

調査結果⑦いらすとやで『あれの名前』が分かる

まず前提を話すと、いらすとやでは各素材は『一般名称』で登録されている。例えばこういう具合だ。

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素材名は「一般名称」、検索対策で素材説明に「固有名詞」も併記されることも多い。

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ラーメン二郎を一般名称的にすると「もやしがたくさん乗ったラーメン」。
外見上の特徴で捉えるとそうなるのか。

この「一般名称ルール」があるとどうなるか。いらすとや使用例を見つけて使われている素材が何かを特定をする過程で『あれってそんな名前なんだ』という発見があるのだ。例えば…

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このお互いに腕を絡ませてお酒を飲んでいるイラスト。おそらく欧米の酒飲みしかやっていないのでこれまで名前を知ることはなかった。しかし、いらすとやを探していたおかげで名前を知ることができた。この行為の名前は

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「クロス飲み」ではなく「乾杯」。これ、乾杯の一種なんだ

このように、いらすとやを探している中で知った「あれの名前」がいくつかあるので紹介しよう。

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もう「あのビヨンビヨン乗ろうか」などと言わなくていい。

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読みは「しゃがんし」。これで視力検査すること最近ないですね

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「やげん軟骨」の「やげん」ってこれのことか…

うっかり勉強になるではないか。

こうしてわざわざ一般名詞を調べて登録してくれているいらすとやだが、中には非常に稀な例として固有名詞で登録されているパターンもある。

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偉大なスティック系チョコレート菓子の先駆者に敬意を評してか「ポッキー」での登録

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一般名称である「浸透印」でも商品名の「Xスタンパー」でもない。
シャチハタは「シャチハタ」での登録。

調査結果⑧いらすとや「3月23日公開素材」の謎 ほぼ解決編

いらすとやの誕生は2012年に遡る。この記事を書いている2022年はちょうど10周年にあたりイラストの総数は2万5000点を超えている。最初に投稿されたイラストはいらすとや内で明らかにされていて『節分のイラスト「笑う赤鬼」』というものだ。

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「いらすとや」全ての始まりとなるイラスト。神々しい。

この「赤鬼」以外にも”いらすとや誕生日”2012年1月31日にアップされた節分系の素材はいくつかある。いつかはこの「いらすとや誕生日素材」を街中で見つけることも目標の1つだ。現状はそこまでは行かずともそれに近い、非常に古い素材の収集成果も出ているのだが、特に2012年1月〜3月アップのイラストを僕は『いらすとや黎明期素材』として特別視している。

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いらすとや黎明期素材の一例。2012年1月〜3月分はとてもレアだ。

黎明期素材には「初期タッチの絵柄」と「説明文の主観コメント」という特徴がある。下の比較画像を見てもらえると一目瞭然だが、まず今のいらすとや素材と初期ではイラストのタッチが異なる。現在のタッチの方がスマートで一般受けしやすそうなタッチなのに対して昔の方はクセが濃い。長期連載マンガの最新話と第1話を見比べて変化を楽しむアレがいらすとやでもできるのだ。

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明らかにタッチが異なる。そして「こんな穏やかな老後に憧れますね」というコメント

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タッチは徐々に変わり2014年には成熟期となり完全に今のタッチに。
主観コメントは本当に2012年のいらすとや初期だけに見られる特徴だ

また説明文に関しても現在は「◯◯をするために使われる◯◯のイラストです」など何のイラストかを説明するシンプルなテキストなのだが、当時は「入学式を連想させる春の花ですね」「ハワイや沖縄など、素敵なところに咲いていますよね」などと作者であるみふねたかしさんの”人格”が感じられる主観的な説明になっている。味わい深い。

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最もタッチの違いが分かるのはこの「ドライブ」の素材。
ほぼ同じイラストが黎明期と成熟期にそれぞれアップされている。

ちなみに現在、街中の使用例として僕が見つけることのできている最も古いいらすとや素材がこちら。

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このタッチ、明らかに黎明期だと分かる

2012年2月21日アップの素材で「エイプリルフールに驚く女性」という謎の素材である。いらすとやが出来て20日ほどしか経っていない時期にこの需要があるのか謎な素材をアップする勇気よ。攻めの姿勢は昔から変わっていない。また、これまで前半500個登録時の最古素材が2012年2月22日だったのだが、そこからさらに2年かけて500個集めた結果、1日だけ記録を更新したことになる。10年20年単位かけて0.1秒縮める陸上競技100mの記録みたいな話である。いつか”いらすとや誕生日”1月31日にたどり着けるだろうか。

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一歩ずつ「1月31日素材」へ

さあ、そしていよいよコーナータイトルになっている「3月23日の謎」に関して。まずは現在見つけている「黎明期素材」を一覧でご覧いただこう。

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こうしてみると黎明期素材はシンプルなものが多い
そして素材の公開日に注目。

見つけている黎明期素材の公開日に注目すると気になる事がある。そう、明らかに3月23日公開素材だけが多いのだ。確率的に明らかにおかしい。いらすとやでは2021年1月に毎日更新が終わるまで毎日数点ずつコンスタントにイラストがアップされていたため、昔からそうなのかと思われていたのだが、この「大量に見つかる3月23日素材」という発見である仮説が浮かび上がった。いらすとや黎明期には例えば書き溜めたらいっぺんにアップする、といった形で素材投下量が日によってまちまちだったのでは、と。いやいや、どうでもいいと思うかもしれない。だが、いらすとや使用例をこれだけ集めた者にしか分からない研究結果なのでもうちょっと聞いてほしい。

500個登録時にすでにこの仮説があったのだが、1000個集めてこの傾向はさらに顕著になり確証は高まった。そしてこの「3月23日素材」分析によって生まれた『いらすとや素材投下量のムラ』仮説だが、思わぬところからさらに確度が高まることになる。

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リンクを貼りたいが2022年3月に何故かページが落ちてしまった…。
画像はその記事のキャッシュから。

この記事ではエンジニア的観点でいらすとやのwebページからURLの数(=素材の数)を抜き出すという手法で毎月の更新数が調べられていた。この調査によると2012年1月の更新数が12個、2月が107個、3月が153個とMAXの月の更新数324個と比べると黎明期3ヶ月の更新数は少ない事がわかる。実際に3月23日の更新数が多いかどうかまではこの調査では分からないが、月ごとにここまでムラあるということは日によって更新数が違う可能性の方が高いと思える。このどうでもいい仮説の確証がさらに高まる結果となった。

調査結果⑨進化するいらすとや素材「マイナーチェンジ素材」の存在

毎日更新は終わったものの、今も素材が日々アップされ増え続けるいらすとや素材。その姿はさながら、枝を伸ばし枝分かれしながら成長を続ける大樹のようだ。ただ、いらすとやの成長はその新芽にあたる日々の新規アップ素材だけではない。すでにアップ済みの素材に関しても、時間が経つとともに微妙に変化が加えられていることを知っているだろうか。

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例)絵のタッチとスーツの色が現在の素材と異なっているのがわかる

これは街中の使用例が何の素材かを特定する過程で偶然発見された事実である。このPOPが作られてから現在までのどこかで素材が修正され再アップされたということだ。こうした元の絵から変化が加わっているイラストのことを僕は「マイナーチェンジ素材」と呼んでいる。どれだけこういう素材があるのかは分からないが、街中の使用例で見つかるこのマイナーチェンジ素材事例は非常に少なく、普通にいらすとやを利用しているだけでは気づくことは出来ないだろう。1000以上の使用例を見つめてきたいらすとやマッピング活動ならではの発見である。

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どの使用例の素材も「いらすとや」内に現在、同じものはなく
”成熟期タッチ”に書き換えられたもののみが存在している。

マイナーチェンジ素材の多くは2012年〜2013年に作られたいらすとや初期素材で、もともとは前項の通り現在よりクセのあるタッチで描かれていたのだが、現在は成熟期タッチに”アップデート”されているというパターンだ。どんな理由があって書き直されたのかは分からないが、例えば上の「手を洗う男の子」などはコロナ禍でこの素材の需要が高まったからあたらめて描き直した、という可能性も考えられる。また一方で、単に絵柄がアップデートされただけではないマイナーチェンジ素材もある。

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女性の顔はあまり変わっていないが、左右の道具がしっかり直されている
そんなに需要が増えてそうな素材にも思えないが…

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こちらも確かに絵柄がアップデートされているが、同時に足も閉じられている

さらに興味深いのは絵柄は同じなのにイラストの内容にわざわざ変化が加えられているマイナーチェンジ素材である。

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現在いらすとやに左のイラストはなくあるのは先生が外国人のものだけだ。
日本人でも問題はないように思えるが…ネイティブの方がそれっぽいということだろうか。

これに関しては単純に先生が入れ替わっている。メガネもしてないし髪型も違う別人。
なぜ…!?前の先生に何が起こったのだろうか

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ビルの5階にある発見難度の高いこちらの使用例ではおじいさんの髪がわざわざ薄く
書き換えられている。一体どんな意図があるのか…

「英会話」はまだ書き換える理由が分かるが、下2つは謎である。彼らはなぜ別人に書き換えられてしまったのか…。まるで芸能人が不祥事でドラマを降板し、代役が立てられたかのようで裏事情を勘繰ってしまいそうである。また、こういった謎マイナーチェンジ事例の中でも最たるものがこちらだ。

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困っている女性自身は変わらず、頭の上のゴニョゴニョの形がわずかに変わっている…

この事実に他に気がついている方が他にいるだろうか。「困る女性」のイラストの上のゴニョゴニョが微妙に変わっているのだ。使用例のゴニョゴニョ線の時点で何ら問題があるようには思えないが、なぜかちょっとコンパクトなゴニョゴニョになっている。一体なぜ書き換える必要があったのか、それは作者のみふねたかし氏だけが知るところである。

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ここまではいらすとやマッピング活動で判明した「新事実」をお伝えしてきたが、次ページでは街中のいらすとや使用例そのものにスポットを当てて特に凝ったものや、素晴らしい例、コネタの数々を紹介していく。

なんと、まとめはまだ半分なのである。

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