今回は2020年秋に行った源泉探索の結果、おそらく入った人がほぼいないであろう貴重な湯に足がハマって火傷しかけたという報告。また2シーズン目となったこの未到温泉探索活動の2020シーズン総括、あとこれは地味に大事件なのだがPC上でのリモート捜索によってガチで未到温泉を見つけてしまったかもしれないのでそれも少し紹介しよう。
------------------------------------------------------------------------------------
普段は「未到温泉の探索報告」は「有名な野湯の探訪報告」と同じ記事内で報告している。温泉探索の報告はつまり「見つかりませんでした」という報告なのであまり書くことがないからだ。あと、温泉探索だけのレポートは他のレポートに比べ極端にPV数が少ない。見ている方からすれば情報性ゼロなので当たり前である。つまり今回は読み飛ばしても問題ないので時間のある方だけどうぞ。
群馬-新潟「上越国境」で温泉探し&謎のサーモ反応の理由
2020年春のコロナ禍による自粛期間中に人工衛星画像とGoogleマップでリモート捜索を行ったのだが、その結果炙り出された候補地のうち2ヶ所を10月に捜索した。
(↓春のリモート源泉探しの際の記事↓)
まず訪れたのは群馬県みなかみ町にある猿ヶ京温泉。ここは2年前、未到温泉の探索をスタートさせた始まりの地でもある。 その時は猿ヶ京温泉を流れる赤谷川沿いを遡上して捜索したのだが、見つけたと思って喜んだらその源泉はキャンプ場の温泉施設からの排水だった。今回はさらに西のエリアを探索していく。
猿ヶ京温泉のバス停から街道沿いを歩き事前にチェックしたポイントまで向かう。今回、人工衛星画像を元にマークしておいたのは以下の場所である。
この3つのポイントには道路や集落がない森の中にもかかわらず熱反応が見られる場所がある。人工衛星画像とGoogleマップを重ねてポイントをいくつか精査してあるので、今期はこういう場所を重点的に捜索している。温泉地のそばということもあり期待は大きい。
さて上記の3ポイントの探索についてだが、結論から話そう。
報告すべき発見は何もなかった…!
バス停から各ポイントを回って、山に入って沢を探したり薮をかき分けたりしたのだが、特筆すべきものは何も無かった…。成果もないのに探索の様子をお伝えしても間延びするので省略させてもらおう。この前人未到温泉の探索活動では文字に出来ていない部分の方が労も時間もかかっている。ここは我慢である。
その代わりに少し検証してみよう。上記の通り、今回選んだのは森の中なのにサーモ画像に反応があった場所だ。市街地や道路、田畑や地面が露出した荒地などはサーモ画像に赤く反応が見られるのだが、そういった場所ではないのになぜかサーモ画像に反応がある場所がある。今期はそんなポイントを中心に探索地域を選定している。なぜ森の中にサーモ反応があるのだろうか、現地で撮った写真を基に考えてみた。
今回の探索地域の大半がスギやヒノキの人工林だった。花粉症の方には天敵といえるこの林だが、サーモ画像の観点から考えると1つ気になる点がある。植林で作られた人工林ということは、植林された直後から苗木が育つまでは林じゃない時期があったということだ。温泉探索に使用している人工衛星のサーモ画像はランドサット5号もしくは7号のものなので撮られたのは1984年〜2000年代のどこかである。このエリアのサーモ画像が撮られた当時、ここはまだ林ではなく植林された苗木が育っている途中の半禿山だったのでは?確かめてみる価値はあるだろう。
Googleアースでは過去の航空写真も見ることができるのでこのエリアの過去の画像を確認すると…
ランドサット5号・7号が運用されていた時期(80年代以降)の画像は無かったが5号が運用される直前の1970年代後半の画像があった。上画像の赤丸の部分が今回の探索地域の1つである。画像が明るすぎて&解像度も十分でなくて、どうなっているのか詳細には分からないが少なくとも当時は林ではなく地面が露出していたようだ。となると植林された苗木が育っている最中、という時期にサーモ画像が撮影され、ここにサーモ反応が出てしまっているのではないだろうか。
ただ他の探索ポイントでも過去画像を調べてみたが、同じように植林前のはげ地ばかりではなかった。1970年代にはもう林になっている場所もあったのだ。ということは森の中に謎のサーモ反応が出てしまう理由は1つではないのだろう。まだ研究は必要だが今回の推理は今後の探索のために参考にしていきたい。
福島県・土湯温泉で未到源泉を探して辿り着いた”謎野湯”
さて、舞台を次の場所へ移そう。やってきたのは福島県・土湯温泉。東京駅から新幹線で約90分、福島駅で降りてバスで約40分と関東からアクセスのいい温泉地である。すぐ南には火山である安達太良山と野湯・沼尻元湯、そして北には同じく火山の吾妻山と温泉ポテンシャルの高いエリアだ。
今回は探索範囲も広いので朝から温泉探しに動くため福島駅前に前泊して朝イチのバスで土湯温泉へ出発。日曜日だったが、早朝ということもありバスに乗客は僕1人である。
しばらくすると右側の車窓には雲に包まれた山々と、その中でも目立つ円錐型の特徴的な山容が見えた。日本百名山である吾妻山と吾妻小富士だ。家が途切れて山々がよく見えるタイミングを見計らって車窓から写真を撮っていたのだが、運転手さんから車内マイクで「吾妻山がよく見えますね。一回停めるので写真撮られますか?」と声がかかった。乗客は1人だし誰も乗ってこないし運行時間にも余裕があるのだろう、それにしてもおおらかな配慮である。大丈夫ですよ、と遠慮はしたのだが気を利かせて停車してくれたのでバスを降りて写真を撮った。ありがとう、福島交通。
そしてバスに再び乗り込み土湯温泉へ到着。
こけしというと宮城のイメージがあるが、土湯は鳴子温泉(宮城)、遠刈田温泉(宮城)と並ぶ三大こけし発祥の地である。それだけに温泉街のあちこちにいろんなタイプのこけしがある。
今回メインで探索を行いたいのは土湯温泉を通って流れる荒川という川沿いだ。上写真の源泉も川沿いにあるし、おまけにもう少し先には地熱発電所の一種であるバイナリー発電所もある。源泉も湧いているし地熱発電も行われている。正直言って、かなり高い確率で他にも温泉があると見込んでいる。
この先のバイナリー発電所よりも上流の川沿いに怪しいポイントが多数ある。かといって源泉があるとは確認されていないので発見できれば前人未到温泉の期待が高まる。まずは発電所を過ぎたあたりから川に入り探索を行おうと山奥へと続く道を歩いていたのだが…。
終わった。
地形図上では発電所の先まで道路が表示されていたので、発電所には近寄れないにしてもその先には進めるのだろうと思っていたが、その遥か手前で侵入禁止になっていた。荒川沿いを探索するなら上流にある幕川温泉から逆に下っていくしかなさそうだが今日はその時間はない。今回は本気で未到温泉を発見できる気でいたので残念である。仕方ないので他の探索ポイントまで移動しよう。
次の候補地までは直線距離なら約2km。しかし蛇行した登りの山道で高低差もそこそこあるので2時間以上はかかるだろう。紅葉シーズンは終わっているが天気はいい。トレッキングを楽しもう。
このポイントは森の中にもかからわずサーモ反応があるし、近くには沢もある。人が立ち入るような場所でもなさそうなので温泉があれば未到の可能性も高い。現場はどうなっているのか。
何もなかった。
地面が剥き出しになっている場所にはサーモ反応が出てしまう。この周囲にはこの崖くらいしか怪しい場所はなかったのでこの崖からの反応なのだろう…。このポイントの探索は終了するが、この何も起こらないくだりを長々と報告していても仕方ないので、最後に今回唯一の成果であるレア野湯を報告しよう。
この野地温泉は噴気が上がりまくりの温泉ポテンシャルが非常に高い場所だ。
野地温泉では宿の敷地からもくもくと噴気が上がっているのが見えるが、実はその野地温泉の噴気場所からは離れた山の中にも噴気を見つけたのだ。詳細な場所は伏せるが、その噴気を目指して深い笹薮をこいでその方向へと進む。
背丈を越える深い薮だが、これまでに経験した地獄レベルのものに比べると生ぬるい。薮こぎ強度は中の上といったところだ。自分の思った方向に進める藪漕ぎと、そうではない地獄レベルの藪漕ぎには天と地の差がある。GPSで現在地を確認しながら噴気に向かい最短距離で進むと5分ほどで少し開けた空間に出た。GoogleEarthで確認した噴気そのものはもっと先のはずだが、湯気のようなものが見える。
謎の温泉を発見!!!!
ネット上にも情報のない未知の野湯である。山の中に突然、温泉湧いている様子はいつ見ても興奮する。湧出箇所はもう少し斜面の上の薮の中にあり、そこから湯が流れてきているようだ。湯温は50℃近くあり頼もしいが近くには湯船を調整できる川などがない。
冷たいのであれば無理矢理にでも入るが熱いのはどうにもならない。諦めて撮影して帰ろうかとした時に足が地面に沈み込んだ。湯だまりの周囲には温泉成分が堆積していて沼のようになっていたのだ。その上に落ち葉が重なっていたので地面かと思い足をハメてしまい激熱の泥が靴下にまでべったりと染み込んだ。めちゃくちゃ熱くて悶えるが登山靴の下のソックスはそう簡単には脱げない。火傷寸前だったが思わぬ形で果たせないはずの入浴も完了。これで福島での探索は終了した。
福島で見つけたこの謎の野湯が未到温泉なら跳び上がって喜んだところだが、おそらくそうではないだろう。近くの温泉宿の方々ならおそらくあの蒸気のことも知っている可能性は高いし、蒸気があるということは温泉もあるのは必然である。わざわざ山の中に入って薮をかき分けてあそこまで行った人はほとんどいないとは思うが僕の考える前人未到温泉はこれではない。おそらくこれまで誰にも発見されずに湧き続けていたのだろう、という確信を持てる温泉であることが必要なのだ。この湯は”半未到温泉”ということで、前人未到温泉第1号の登録はまた確信が持てる湯を見つけるまで取っておきたい。
今、一番行きたい場所
そして最後に2020シーズンを締めくくる報告をしよう。2年目も達成できなかった「前人未到温泉第1号」の登録だがもしかすると2021シーズンに事態が動くかもしれない。2020年12月末。来シーズンに向けて人工衛星画像やGoogle Earthを使い探索場所を検討していたのだが、ある場所に目が止まった。サーモ反応の強いエリアをGoogleEarthで細かく見ていたところ、小さな噴気見つけた。しかも、その噴気が上がっているポイントの半径500mくらいには建物もない山の中。さらに蒸気が上がっているのは川の中からなのだ。ということは、川の噴気が出ている付近は高い確率で温泉になっている。
噴気があるからには温度も高く、川であるからには水がある。そして人の目にもつかない山の中。条件は期待は高まるが周囲にパイプ?のように見えるものもある。ネット上には情報がないので現地に行って確認するしかない。ここが前人未到温泉なのか、2021シーズン中のどこかで確かめてきたい。
今回は【福島の謎野湯】の映像だけ少し公開