「未踏の温泉」探索活動の前日譚
ここで今後、報告していこうと思っている「まだ発見されていない新しい温泉(源泉)を山で探す」活動だが、本格的に始めると決心する前に迷っていた時期が当然あった。
山に入っては「何も発見できなかった」という報告を延々するだけになるのでは、という疑念があったからだ。(まあ今でもその不安はあるのだが)
なので本腰を入れて始める前に、まずは試しに軽く山に行ってみようと思った。
どうせ本格的に山に入るのは春以降になるし。そう思い温泉を探しに行った。
それが2018年11月の頭。
そして、翌月12月にはこの活動を決心し、装備を揃えたり、川に湧き出す温泉に予行演習に行ったりすることになる。
それがこれまでのブログでの報告だ。
それでは、11月に何があったかというと…
温泉が湧いている場所を見つけた。
マジかよ。
師匠(※最初のブログ参照 福田重雄さん)にもらった衛星画像を元に、怪しい場所に当たりをつけて探しに行ったら、もうあった。
師匠、凄ぇ!
はっきり言って、めちゃくちゃテンションが上がった。
湯気めちゃ出てるんですもん。
ほかほかのやつ。
「未踏温泉発見への道」という本を出すとしたら【第1章 温泉発見!】になってしまう。起承転結もクソもない急展開である。
僕がいきなりイカれた活動を始めた、と周囲に思われている可能性はあるが、正直こんなことがあったら誰でも「他にも温泉湧いてるところを探そう!」と意気込んでしまうはずだ。
とりあえず、その温泉を見つけた時のことを報告したい。
探索①「八ヶ岳」
活動を本格始動させる前に試しに2ヶ所で温泉探索を行った。
その2回の探索結果をざっと報告するが、この八ヶ岳山麓での探索は実は2回目の探索である。
なぜ1回目の探索から書かないのか?
それは1回目で温泉が見つかったからだ。
なので構成的な盛り上がりを考えて2回目から書いている。
この八ヶ岳編では何も見つからない。
正直に告白したので許してほしい。
勝手に話を進めると、八ヶ岳は長野県と山梨県にまたがる2889mの赤岳を主峰とする山塊で北アルプスと同様、山に登る者にとっては憧れの地だ。
しかも、八ヶ岳には山のかなり上の方に温泉が湧いている所があって、日本最高所の野天風呂こと本沢温泉【標高2150m】もある。なので、山麓のどこで温泉が見つかっても不思議ではない。(見つからなかったが)
見つからなかった探索の過程を追ってもしょうがないので、ここで「未踏温泉の探索」における重要な問題を八ヶ岳を例に説明しておく。
”重要な問題”とは、すなわち、「温泉を見つけたとして、それが本当に今まで発見されたことのない温泉かどうか分かるのか」という部分だ。
正直いうと、日本中全ての源泉を記載したそんな細かいデータベースはない。
おそらく。
なので、この活動では国土地理院の地形図に載っているかどうかを一旦の基準にする。
学校でも習ったように、この地形図には等高線や植生、建物などが記載されていて、その中にはおなじみの温泉マーク→♨︎で源泉の位置が記されている。
いわゆる温泉街や温泉のある施設(もしくはその近く)にあるものだが、たまに民家なんてない山奥にも温泉マークがあったりする。そういう温泉(野湯)には調べても名前もなく、ほぼ忘れかけられているようなところもあるようだ。それはそれで非常に興味あるし、そういう謎の温泉マークをを目指して探索している人はすでにいる。偉大な先駆者である。
この「前人未到温泉」活動では地形図にも載っておらず、検索しても情報がない温泉を見つけ出すことを最終目標として設定する。
というわけで八ヶ岳にやってきた。今回は色々なピークのある八ヶ岳の中の「中山」の麓あたりにある渋川流域を探索した。
まず思ったのが、衛星画像の凄さ。
衛星画像を見て温泉が湧いてそうな怪しい所に行ってみると、実際に源泉があるのだ。そこが道路が近くにあるような場所なら、どんなに田舎でもたいていは温泉宿泊施設がすでに建っていた。いわゆる秘湯と呼ばれていそうな渋い宿だ。
せっかくなので秘湯にも入ってみたが、このあたりの源泉は30℃あるかないかくらいの温度。そんな低い温度の源泉でもでも衛星画像上にははっきり位置が現れていた。衛星画像、優秀である。
上の画像で示したうち、左2つは道路の近くにあるスポットだったが、この後いよいよ山中へ入っていく。(上の地図上で「??」となっているスポット)
基本的には温泉探索は沢沿いを探すことになる。温泉がちゃんと湧いていればその湯は自然と川に流れ込んでいるはずだ。登山道を外れ、GPSを見ながら沢を探す。
そんな時にこれまで使用していた「地形図」では少し問題が起こることがある。情報が古いことがあるのだ。
国土地理院の地形図は10年くらい更新頻度が空くこともあり、地図に載っている沢に行ってみたらもう枯れていた、とうことも実際あった。
なのでこの探索活動では、もう1つの山の地図「登山地図」を使用している。
登山ではおなじみの地図で、詳しい登山道やコースタイム、山小屋の位置、駐車場の位置などが分かり登山に必要な情報が網羅されている。定番は「山と高原地図」。
地形図が数年に一度しか更新されないのに対し登山地図は毎年アップデートされるので、登山道など山の状況がより最新になっている。
どちらにも長所・短所があるので2つの地図を組み合わせるとお互いの欠点を補完できる。温泉探索にはこれにGPS端末と衛星画像を併用して計4つの地図を元に山中を歩いている感じになっている。
実際、温泉も枯れたり湧いたりしている可能性があるので、片方の地図には載っていない沢にも一応行ってみるのがいいだろう。
ところで前の地図の「??」の場所だが、探索時には探したつもりになっていたが、実際には探した場所がどうやらずれており、辿り着けていなかった。今後に再探査する必要があるかもしれない。
…というのが、八ヶ岳での探索。
探索②「箱根」
もう一か所の探索地域は箱根だった。
とはいえ箱根なんて、湯本に強羅、芦之湯、仙石原と温泉地が点在し、いたるところが開発されているのでそこを探してもしょうがない。なので向かったのは「畑宿」という箱根の中では宿もないような地域。
箱根湯本から芦ノ湖方面へ抜ける道のうち、箱根駅伝のコースになっていないほうのひっそりとした道である。
バスを降りて、山に入る前に集落近くの川沿いを探索していた。ここにも地温が高く、怪しいスポットがあったのだ。
…その時である。
草むらからめちゃめちゃ湯気出てる!!
なんか温かいし!
こちらの動画を見てほしい。
いや、そんなに大したことないのは承知している。
これ見させられてどうリアクションしたらいいのか、という話だろう。
しかし興奮した。
画像を頼りに怪しい場所に目をつけてはるばる知らない土地に温泉探しに来たら、すぐ温泉が湧いている場所があったのだ。しかも、これは地形図にも登山地図にも載っていない場所だ。
そのあとの山での探索は完全に空振りに終わったが、これだけでこの日は満足だった。
ただ未発見かというと、そんなことはなかった。
後日、ネットで検索すると箱根地域の源泉の位置を記した論文があった。
https://www.onken.odawara.kanagawa.jp/files/PDF/houkoku/43/houkoku43-p73-79.pdf
そもそも民家の近くなわけで、未発見でないのは当然だろう。
しかし、地形図や登山地図に記されていない源泉を早くも見つけてしまった。
雪解けを待って次の探索へ行くのが待ち遠しい。