14歳からノートを回すこと22年。これまで自分1人だけでこの”スポーツ”をひっそりと楽しんで来たのだが、気がつけば100万人もの人に見てもらえたし、推しと一緒にノートを回してなぜか公式ノートも発売された。なんだこれ。今回は20年の時を経てフリースタイルノートブックに起きた奇跡とそれによって起こった22年目の進化を紹介したい。
中2の自分に「お前、20年後にこれで大変なことになるぞ」と教えてあげたい
そもそも「フリースタイルノートブック」とは僕が中2の時(1999年)に生み出したノートを自由自在に操るスポーツだ。長きに渡ってほぼ人に見せることなく1人で鍛錬していたのだが、思うところあって2019年に初めてネットで公開した。フリースタイルノートブックの生い立ちと基本的な情報はその時にブログでも書いている。
【フリースタイルノートブック2019】(公開1年目)
【フリースタイルノートブック2020】(公開2年目)
フリースタイルノートブックを公開したのはこの競技を生み出して20周年を機に改めて自分の”ライフワーク”として今後の活動を記録していこうと思ったからだ。活動報告として2019年から毎年1本ずつ、1年間の活動を動画にまとめることにした。10年、20年、年を重ねていき最終的には足腰が立たなくなるまで続けていこうと思っている。自分のプレースタイルがどう変わっていくのか、還暦になった自分がどんなノート繰りを見せるのか、今から自分自身楽しみだ。
ーそう思っていた2020年。活動を記録し始めて2年目のこと。櫛野展正さんに受けたフリースタイルノートブックに関するインタビュー動画がtwitter上で注目され105万回再生されることになった。
→→2020年8月現在、150万回再生を超えました。ありがとうございます。
三浦靖雄さんは、14歳のとき、ノートを片手で自在に操る競技「フリースタイルノートブック」を考案した。以来、35歳の現在まで誰に見せるわけでもなく様々な技の習得に励んでいる。以前は「カレッジ」という名称だったが、昨年「フリースタイルノートブック」に改称。しかし競技人口は未だ1人だけだ。 pic.twitter.com/n4Befm7OKD
— 櫛野展正@クシノテラス (@kushinon) 2020年8月18日
櫛野さんは世に埋もれた表現者にスポットを当て紹介している方で、もともと彼の活動に興味を持ってイベントに参加したり展覧会に行ったりしていたのだが、完全にミイラ取りがミイラになったような形だ。しかも同じ広島県福山市出身。1999年に福山で生み出されたフリースタイルノートブックが同郷の人物によって世に知らされたのには因果を感じる。
動画には思わぬ大きな反響があり僕自身、非常に嬉しかった。
twitter上で話題になったことがきっかけとなりネット記事にもして頂いた。今まで隠していたつもりもなく、ただ個人的に楽しんでいただけなのだが世間からすると「20年一人でノート回し続けているやベー奴が発見されたぞ」的な受け止め方になった。例に出すのには申し訳ないが、横井庄一さんがジャングルで発見されたニュースと同じジャンルである。フリースタイルノートブックの生みの親としては我が子が20年ぶりに日の目を見たことは誇らしいような非常に恥ずかしいような気持ちである。
J-CASTニュースの記事はデイリーポータルZ編集部・古賀さんの”2020年推し記事”にも選んで頂いた。デイリーに多大な影響を受けているので非常に光栄である。
またネット上ではフリースタイルノートブックにいわゆる「やってみた」系の動画も現れた。下記の動画では丁寧にもご本人(YouTuber・Pさん)からわざわざ動画を出す前に許可の連絡まで頂いた。許可なんていらないですよ。
そして、ももクロには番組でフリースタイルノートブックをレクチャーすることに。長年、ファンクラブに入ってライブに通っている者として信じられない思いである。中2の僕に「お前、将来これを自分が推してるアイドルに教える時が来るから頑張れ」と教えてあげたい。
ももクロちゃんとフリースタイルノートブック
— 『ももクロちゃんと!』【テレビ朝日公式】 (@momoclochanto) 2020年11月13日
ありがとうございました!
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特に対決した百田さんは僕がやった天地返しなどの技をその場で習得したのに加え、自分のオリジナルムーヴを編み出していた。世界2位のフリースタイラーと言っても過言ではない腕前である。
そしてもう1つ、フリースタイルノートブック界に大ニュースが飛び込んだ。twitterで話題になったことにより「僕も同じようなことを子供の頃からやっていました」という方が現れたのである。
この方はTETTOU(鉄塔)さんという方でtwitterで知り合った。僕と同じく中学くらいにノートや本といった”板状のものを操る技”である「ニュートンボード」を開発し今も続けているという。上記の動画を見てもらえると分かるのだが”ノートを操る技”という共通点はあるもののノート操りのアプローチが全く異なっている。重力や遠心力を利用するスタイルは同じだが僕の「フリースタイルノートブック」がノートのトス(投げ上げ)&ターン(ひっくり返す)に基本があるのに対し「ニュートンボード」はノートを手(手のひらや手の甲)から離さずに常にコントロール下に置くことで滑らかなムーヴを可能にしている。しかも凄まじい練度である。ネットのおかげで異なる環境下で進化を遂げた別流派のノート使いと出会うことができて本当に感動した。その後、駒沢公園で対面しお互いに技を見せ合うセッションも行うことができた。フリースタイルノートブックの歴史に残る邂逅である。ありがとうインターネット。
などなどがあって2020年はフリースタイルノートブックの歴史に残る年になった。その中で1つ思うところがあった。現在のフリースタイルノートブックは中2で作った頃から技やムーヴ含めほぼ変わらずに20年以上経過し今に至っている。しかしこのままでいいのだろうか、と。プレー動画に対するリアクションは色々あって大半は好意的なものだったが、中には鋭い指摘もあった。
★【20年やってるにしては技の種類が少ない】
★【ほぼ右手しか使ってない】
確かに。
いや、自分でも分かっていた。改良したいとも思っていたのだ。思っていたのだが自分でノートを回して楽しむ分にはこれで十分で重い腰を上げられずにいた。独占市場につき市場原理が働いていないのだ。上記のリアクションについて「そこはそっとしといてよ」とも思ったが、図らずも多くの人に見られたことによってきっかけができた。中二感が残っていた方が面白いという判断もあるが、そろそろ中学の自分を超えたいと思う。
20年ぶりに新技を作ろう
中学時代リビングで勉強をしていたのだが、その合間にフリースタイルノートブックを練習して生み出した技が7つ。「7つ」という技の数も認識していた訳ではなく、今回数えてみたら7つだったというだけだ。技の数も知らずに20年やっていた。そして技名は1つしかついていない。ノートを投げ上げて上下をひっくり返すフリースタイルノートブックの代表技『天地返し』。当時、家庭科の授業で行った味噌作り、そこで出てくる「味噌の発酵を促すために上下をひっくり返す作業」の名前を取って名付けた。
新技を開発するにあたって技の種類を明確にするために「天地返し」以外にも技名を命名することにした。中2のころにつけた技名ならまだしもいい大人(36歳)になって「技名を考えるという」作業は非常に恥ずかしい。恥ずかしいが、しょうがない。
まずは中2当時からあった7つの技を命名した。
(1)エイトノット (8の字を描く)
(2)天地返し (内側に180°ターン)
(3)サイドターン (外側に180°ターン)
(4)サイドトス (外側にターンさせながらトス)
(5)ワイドスウィング (両手で交互にサイドトス)
(6)サテライト (体の周りを一周回す)
(7)レッグスルー(脚の下をトスで通し天地返し)
「天地返し」以外はカタカナネーミングで統一性がないが、天地返しと同じ方向性で名付けていくともっと恥ずかしいことになりそうだったので諦めた。8の字を描くようにノートを操る「エイトノット」はつなぎ技である。フリースタイルノートブックはルールとしてノートをホールド(※掴むなどしてノートを留め置くこと)してはいけないことになっているので、他の技をしていない時にはこのエイトノットで繋がないとならない。上級者になるとそれぞれの技を繋ぎ技なしに直接繋げるようになるので使用頻度は下がってくる。
ちなみにフリースタイルノートブックではこれらの技のことを「トリック」と言い、トリックの組み合わせによる一連の動きを「ムーヴ」という。誰も必要としていない情報かと思うが記しておく。
そしてこの1年で新しく開発した技と名前がこちらである。
(8)スナップフリップ(手首を返し180°ターンさせながらのトス)
(9)kanako (脚の間を交互に通す)
(10)サマーソルト (360°ターン)
(11)メビウスロール (左右交互に360°ターン)
(12)コークスクリュー (540°+180°ターン)
5つのトリックが新たに誕生した。kanakoはももクロの百田夏菜子さんが収録で行っていたムーヴにインスパイアを受けて誕生したトリックのため勝手に名前を拝借している。
こうして2021年ver.のフリースタイルノートブックは7+5で計12個のトリックで構成されることになった。それぞれ単体で動画を置いておく。
これら12のトリックを左右どちらの手で行うか、どうトリック同士を繋ぐかでムーヴを作っていくことになる。技によっては左右どちらの手で行うかを変える「ハンドチェンジ」や手元を見ない「ノールック」などアレンジ技もありムーブのパターンは多種多様となる。それでは22年目にして初めて進化した「フリースタイルノートブック2021ver.」がこちらである。
「(8)スナップフリップ」だけムーヴに組み込むのを忘れてしまっていたがそれ以外のトリックは全て入っている。ちなみにこの動画にトリックをどう繋いでいるかを入れるとこうなる。
フリースタイルノートブックをプレーする際のポイント
21年の成果発表はこれで終わるが、最後に道具や環境に関して僕の知識を記しておく。需要はないと思うので万が一フリースタイルノートブックを始めたいという人がいたら読んでほしい。
【ノート】
使用ノートは何でもいいのだが、個人的にはデルフォニックスの「ロルバーンノート」、もしくは「ももクロちゃんと。フリースタイルノートブック公式ノートブック」がグリップ力がとても高く扱いやすい。ショウワノートの「ジャポニカ学習帳」もなかなかいい。ノート次第でトリックの難易度は変わるのでこれらの扱いやすいノートでプレーしよう。
【プレー環境】
動画では主に屋外で撮影をしているがフリースタイルノートブックは本来、屋内スポーツである。屋内でのプレーを推奨する。ノートは軽いので風にめちゃくちゃ弱く、すぐに風に飛ばされ屋外では難易度が跳ね上がる。少なくとも風速3m以下でないと厳しいので屋外でプレーする際は気をつけてほしい。地面にノートが落ちると砂や土でノートのグリップ力が落ちるのでそれも大敵だ。
【シーズン】
フリースタイルノートブックではある程度手に湿りがないとグリップ力が発揮できずうまくトリックが出来なくなってしまう。なので11月から3月までは原則シーズンオフである。もしも冬季にプレイする必要がある場合はハンドクリームを使うことを推奨する。僕も色々試しているが大人用はサラサラ系が多いので、今のところは赤ちゃん用の「パックスベビー」を愛用している。
それでは皆さんの健闘を祈りつつ、僕も来年に向けて技を研鑽していこうと思う。
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追記【フリースタイルノートブック2022】
追記【フリースタイルノートブック2023】